異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念

チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳)
異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念


最近、数学読み物にはまっていて、色んな本を読んでいる。この本は、ゼロの登場から現代に至るまでの、ゼロのさまざまな影響をスリリングに描いている。

「ゼロは魚雷のように米国の軍艦ヨークタウンを襲った」という一文から始まる。1997年のことだ。原因は"division by zero"のバグが制御システムにあったためだ。ゼロは数学の始まりから、現代にいたるまで、さまざまな場所で、破壊的な影響力を及ぼして来ている。また及ぼし続けている。たかがゼロなのに。

途中に簡単な数式がいくつか出て来るが、いずれも高校レベルなので、数学の専門知識は不要だ。

ゼロと裏表の関係にある無限、ゼロと無限に支えられている微分積分、物理学におけるゼロの役割など、教科書ではさらりと触れられている重要な部分を例を読みながら楽しく理解できる。高校生なら読めると思う。娘に勧めてみようかな。


本書の付録にある、ちょっと楽しい例を以下に示そう。

aとbは1であるとする。
よって bb = ab ...(1)
また aa = aa ...(2)
式2から式1を引くと、
aa - bb = aa - ab ...(3)
である。因数分解すると、
(a + b)(a - b) = a(a - b) ...(4)
両辺を (a - b)で割ると、
a + b = a ...(5)
両辺からaを引くと、
b = 0 ... (6)
最初にbは1としたので、
1 = 0

初心者プログラマがけっこうやっちゃうんだよね。