国際子ども図書館


上野駅についたのが午前11時ごろ、影をくっきりと切り抜く強い陽射しが照っています。目的地は国際子ども図書館ですが、まだ時間が早いかなと思い、とりあえず手近の国立西洋美術館にふらふらと入りました。


国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp

特別展として「大英博物館所蔵フランス素描展--フォンテーヌブローからヴェルサイユへ--」という展覧会が開かれていました。素描なので薄暗い展示でぼんやりと照らされています。その中を見回っている内にだんだん気分が落ち着いてきて鑑賞できるような心持ちになってきました。ただ展示品そのものはあまり面白みを感じませんでした。そのまま常設展へ行き、古典絵画や、ロダン、モネ、ドニなどをさっさと見て外へ出ました。もちろん有名な絵がたくさんありましたが、こちらの準備が十分でないせいか衝撃はいま一つでした。それでもゴッホの「ばら」やモネの「黄色いアイリス」、ピサロの「立ち話」などは実物を見れて幸福になりました。

外はさらに日射しが強くなってきていて冷房の中から出るとくらりとします。そのまま上野公園をつっきって国立博物館前まで来ました。お昼近くになりお腹が空いてきたので、国立博物館の中の精養軒に行きました。



東京国立博物館
http://www.tnm.go.jp/

御存じと思いますが精養軒はあまりおいしくありません。気候が良ければ弁当を持ってきて上野公園で食べるのがいいかもしれません。でもホームレスの人たちが大勢なのでちょっと気後れしますが。

さて腹が満ちると国立博物館を制覇したい気になってきました。まずは東洋館へ行きました。東洋館は日本以外の東洋美術や考古遺物がおさめられています。始めて入りましたがすごいです。とても面白い。客は土曜日の昼だというのに少なくがらんとした中でゆっくりと見る事ができます。メトロポリタンを彷佛とさせるすばらしい展示品の数々です。ただ展示の仕方がへたくそです。古臭いと言ってもいいかもしれません。添えられているコメントもとても面白いのですから、ここはぜひリニューアルしてもっとアトラクティブな展示にしてもらいたいものです。iPodの音楽を聞きながら1時間半ほど歩き続けました。

そのまま本館へ向かいました。こちらは日本の工芸美術品がさすがに多数展示されています。当然ながら国宝や重要文化財ばかりです。順路どおりに陶磁器の展示室へ入りました。しょっぱなに柿衛門、古伊万里、鍋島、唐津などの名品が多数展示されています。そうかこういう所にあるのか、と思った次第。しかしやはりあまりぐっと来るものがなく、まだ私には早いかなとも思いました。でも唐津は良かった。国宝の日本刀が展示してありました。刀剣などはまったく不案内ですが、それでも惹き付けられます。綺麗というにはちと怖い感じだけれど。染め物、武具、彫刻と見てまわりまして、鎌倉の曹源寺にある十二神将像が出張して来て展示してありました。高さ1.5mぐらいの木でできた神様の像が干支にちなんだ12体揃いで展示してあります。どれも仁王様のような迫力ある顔をしている戦神たちで、その体の動きのダイナミックさと表情の豊かさ、形のバランス、装飾のオリジナリティなどすばらしい像達でした。それから二階へ回って日本画、漆工芸、書など見回ったら、日頃の運動不足がたたり足はもうがたがたです。

ミュージアムショップにも行ってみましたが、いまいちですね。ここもリニューアルが必要だと思います。

もうそのまま出ようかとも思いましたが、西川寧という書家の展覧会が表慶館であっているので、それだけでもと思い見に行きました。このあたり貧乏性なんですかね。でもこの西川とかいうじいさんの書道がすごく面白い。さっさと見回りましたが、そうかこんなに書道ってのは面白いものだったのか、と思いました。直前に古い名筆を山ほど見た後だと、極めて現代的な書であることがわかり、その新鮮な香りがとても魅力的でした。

さて十分に美術品を満喫したところで本来の目的の国際子ども図書館へ向かいました。


国際子ども図書館
http://www.kodomo.go.jp/

さいきん安藤忠雄によって改築されたことで建築関係の人が幾人か見学に来ているようでした。明治39年にたてられた古い図書館をほとんどそのまま残して、ガラス張りのピロティをくっつけたような不思議な建物です。美しい建物ですが、なんとなくまだ落ち着きがなく居心地はもう一歩でした。あと数年もすれば良い感じになるでしょうか。私は安藤がイメージしたようにピロティに子ども達が寝そべって本を読めるようにしたらよかろうと思ったのですが、今は図書室から本を持ち出すのはできないようです。また色々な所に進入禁止などの札があるのも居心地の悪さに影響しているように思います。

まずはカフェテリアでアイスコーヒーを飲んでひと休みします。このカフェテリアも手狭でどうもいけません。味は、まぁ普通です。最近は東京でもおいしいカフェが増えてきたので上野は遅れているのかなと思いました。

子どもの部屋へ行きました。円形の本棚が置かれています。置かれている本のセレクションはさすが、こうでなくっちゃという品揃えです。飛行船通信社の通信員ならば基礎勉強のために参拝すべきかもしれません(^_^;)。

ここは5時までしか開いていないのに、入ったのは4時をまわっていたのであまりのんびり本を読んでいる暇がありません。次に二階へ行きました。ここは資料室です。入り口にある利用カードに名前と住所を書いてカウンターに出すとバッジを渡されます。天井まである書架に児童書関連の資料がびっしり詰まっています。カウンターの横には児童文学関連の研究雑誌など、普通にはあまりお目にかからない書物のバックナンバーが揃っています。中から読もうと思って取り出した白百合の研究報告に国会図書館のスタンプが押されていました。そう、ここは国会図書館支部なのでした。論文をいくつか読んでいる内に時間がおしてきたので、さっさと出て3階の展示ホールへ行きました。「不思議の国の仲間たち」という展示で不思議な物語を扱った本を展示し、パネルで説明が加えてありました。このセレクションもなかなかなもので、司書の方のレベルの高さを感じました。すぐに5時になり終鈴の音が響いて閉館の時間となり、外へ出て、本日の上野詣は終わりです。

国際子ども図書館の感想としては、けっこう大きな建物なのに妙に狭い感じがしました。それは安藤の建築や、司書のレベルの高さ、収蔵書物の質と量の充実に対して、まだ運営や使い勝手の方が追い付いていないからだと思います。使いこなせていない。そういう印象です。


2002/8/12
few01