2007-01-01から1年間の記事一覧

魔法ファンタジーの世界

脇明子 導入と四つの章から構成されている。導入部には、今の児童文学ファンタジーを取り巻く状況を、たんに上っ面をなぞるのではなく、著者自身の立ち位置から嘘をつかないように問題に迫り、的確にまとめている。脇氏はノートルダム清心女子大の教授であり…

月刊言語2006年6月号 特集「ファンタジーの詩学 ---想像力の源

月刊言語2006年6月号 特集「ファンタジーの詩学 ---想像力の源泉をたずねて---」 http://thistle.est.co.jp/tsk/detail.asp?sku=50606 言語学関連の雑誌「言語」でファンタジーの特集が組まれていた。 特集記事は以下の通り: [1] 二重性の文学としての…

MIND HACKS -実験で知る脳と心のシステム-

Tom Stafford and Matt Webb だまし絵を見ると、世界が揺らぐ。 同じ長さの棒の長さが違って見える。 あるはずの無い図形が見える。 止まっている絵が動いて見える。 私たちは、自分の五感で感じている世界が、継ぎ目なく辻褄があっていると、信じている。自…

あたらしい教科書 3 ことば

加賀野井秀一、酒井邦嘉、竹内敏晴、橋爪大三郎 「あたらしい教科書」というシリーズが刊行されている。その第3巻が「ことば」だ。なかなかいい。大変丁寧な本作りがされている。プチグラパブリッシングという出版社は知らなかったが、チェブラーシカや北欧…

ソング・ブック

谷川俊太郎+谷川賢作 「ゆっくりゆきちゃん」を知っているだろうか。あんまりゆっくりなので、ゆっくり朝の準備をして、たどりついた学校はもう終わっていて、家に戻ったら、娘が三人生まれていた、という、ナンセンスが混じった、谷川俊太郎の詩だ。究極の…

かもめ食堂

荻上直子 今日(2006/5/1)は平日ながら職場が休み、妻は仕事、娘は学校なので、家に一人だ。掃除をして、さて、どう時間を過ごそうかと考えて、映画を見に行くことにした。近所のシネコンの上映リストを眺めてみたがめぼしい物がないので、ちょっと遠いけど、…

最後の一壜

スタンリイ・エリン ゆっくりと読んでいたミステリ短編集『最後の一壜』を読み了えた。ちょっと古いが、1963年から78年にかけて1年に1作づつ書かれた短編集である。どれも丁寧で、密度の濃い読書時間を約束してくれる。なお、ミステリとしての切れ味は鈍い…

夜消える

夜消える 藤沢周平 藤沢周平の短編集を久しぶりに読んだ。いい年をした(中年以上)男女の機微を描く小説ばかりである。どもれ大人の人間関係で、子供の頃は、まったくピンとこなかっただろうが、この年になって読むと、どれも実感がある。「踊る手」「遠ざ…

空中庭園

角田光代 最近ときどきテレビで拝見する角田光代の代表作と言われている。以前から気になっていたので読んで見た。団地に住む家族の話だ。父、母、姉、弟、と、少し離れて暮らす祖母や、父の愛人などが出て来る。表面的には現代的に、コミュニケーションも上…

地球の長い午後

ブライアン・W・オールディス 今とは全く姿が変わってしまった遠い未来の地球の話だ。地球の半分以上が熱帯になっていて、巨大な肉食植物が繁茂している。人間は、今よりもずっと小さな体で、樹上生活者として細々と生き延びているが、他の哺乳類のほとんど…

人間は脳で食べている

伏木亨 毎日新聞の書評で取り上げられていておもしろそうだったので読んでみた。ちょっと文体が読みづらいが、内容は面白かった。わたしたちが、ものを「おいしい」と思う時には、さまざまな要因が絡んでいて、その中で特に人間、それも現代人に特殊に大きく…

神はサイコロを振らない

今クールのTVドラマで毎回楽しみにしていた『神はサイコロを振らない』が最終回を迎える(2006/3/12の文章)。最初はSF風味なコメディドラマだと思っていたが、立派にSFだ。というか最近久しぶりにまっとうなSFだと思う。マイクロブラックホールが、どうこうい…

歴史時代書房 時代屋

http://jidai-ya.com/index.html 神保町、というより小川町にある不思議な本屋、兼グッズショップだ。本屋街からスポーツ用品店の並ぶ通りを過ぎて、オフィス街に入ったあたりにある。一見、変なグッズショップで、入ると、ちょっとケバい本屋である。中は縁…

東京 古本とコーヒー巡り(古書店)

なかなか洒落た本で、これをめくっていると本屋とカフェに行きたくなる。新刊書店の方で、最初に掲載されているのは東京堂書店である。あそこは凄い。ほんと何時間でもいられる。このML(飛行船通信)に関するところとしては、教文館ナルニア国、トムズボック…

東京ブックストア&ブックカフェ案内(新刊書店)

かもめ食堂

群ようこ 本屋で立ち読みして、選んだ。もうじき映画が公開されるらしい。見にいこーっと。映画の原作として書き下ろされた小説だそうだ。フィンランドに、一人の日本人女性が開いた小さな食堂「かもめ食堂」、にまつわる話だ。飄々とした楽しい話である。こ…

博士の愛した数式

小泉堯史 良い映画だ。ただ原作を読んでいない方がより素直に楽しめるだろう、と思った。原作をなぞったシーンは、原作を思い出しながら見てしまう。原作は、小川洋子の作品の中では特異的に、いわゆる「良い話」になっているとのことだが、それでも私には、…

小さな王子さま

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 山崎庸一郎訳 昨夕、借りて来て読み始めて、私にとっては意外な事に、どっぷりと読みふけってしまった。以前、『星の王子さま』読んだのはいつだったろうか。もしかすると10年以上前かもしれない。もっとさらりと読…

バッテリー IV

あさのあつこ III巻を読んだのが大分前だったので、どういう所まで話がいってたのか完全に忘れていたが、ちょっと読んだら思い出した。横手の中学校と練習試合をするという話だった。あいかわらず上手い。今回、印象的だったのは、横手の瑞垣と門脇だ。中学…

ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」

高山一彦 ジャンヌ・ダルク研究は、ずいぶん大きな広がりを持っているとわかった。フランスでは飛び抜けて人気のある歴史上の人物ということらしい。日本だと義経かなぁ。でも義経は救国したわけではないから、ジャンヌ・ダルクは、もっと大きな存在なんだろ…

刀狩り

藤木久志 1588年7月8日に秀吉が出した「刀狩令」を、本の説明をもとに、私が適当に現代語訳すると以下のようになる。 第一条 百姓は刀、小刀、弓、やり、鉄砲、その他の武器は所持してはいけない。余計な武器を所持して、年貢をおさめるのを渋ったり、一揆を…

はじめからの数学 (5) 数学と自然法則 ~科学言語の開発

J・タバク (著)、松浦 俊輔 (翻訳) 学校で習う数学は、エレガントに整理された形で教わる。もちろんそれで良いのだけれど、最初からそんなに整理されていたわけではないんだな。当たり前だけれど。これらの本を読むとそれが良くわかる。数学の世界での偉人た…

はじめからの数学 (4) 確率と統計~不確実性の科学

はじめからの数学 (3) 数 ~コンピュータ、哲学者、意味の探求

はじめからの数学 (2) 代数学 ~集合、記号、思考の言語

はじめからの数学 (1) 幾何学 ~空間と形の言語

ローマ人の物語 17,18,19,20 悪名高き皇帝たち (1,2, 3, 4)

塩野七生 カエサル、アウグストゥスの後の四人の第一人者(皇帝)の時代が描かれている。 並べると、 ティベリウス(年寄) カリグラ(若造) クラウディウス(年寄) ネロ(若造) の四人となる。ティベリウスの巻の冒頭は、ナポリ湾にある小さな島の話ではじ…

寝床術

睡眠文化研究所 編 私は睡眠が好きだ。世の中には、長時間寝るのが苦痛だという人も、少なくないが、私は、たくさん寝るの平気。みなさんは、どっち派?なので「心地よく寝たい」という要求は強く、この本は、そういう私の目に止まった。書名からすると、HOW…

職人暮らし

原田多加司 古いお宮など、歴史的建造物の屋根を「葺く(ふく)」職人の親方である原田氏が、土木関連の職人の仕事、生活などを書いた本である。彼が書いているように、今は一種、職人ブームといった状況で、たくさんの本が出ている。しかし実際に職人が書いた…

決断力

羽生善治 短い、やたらにキレのある文がならんでいる。彼の将棋も、こういう感じなのだろうか。私は将棋は頓珍漢なので、わからないが。ここ20年で、将棋の世界は大きく変わったそうだ。要するにIT化の波が押し寄せたためだ。彼は、昔の名人と、現代の将棋指…