2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

豆つぶほどの小さないぬ

佐藤さとる 私は佐藤さとるの書く話が大好きで、出版されている本はほとんど読んでいる。ファンといってもいいかもしれない。ファンというのは、往々にして「あばたもえくぼ」に陥りがちで、この文章も割り引いて読んでいただいた方がいいだろう。彼の代表作…

エラントリス 鎖された都の物語

ブランドン・サンダースン 中三の娘から面白いから読んでみて、と言われて、多少しぶしぶ手に取ったハヤカワFTだ。読んでみて娘を侮っていたことに気付いた。軽いライトノベル風の異世界ファンタジーだと思って(タイトルからして、そんな感じ)読み始めたの…

グラン・ヴァカンス ―廃園の天使(1)

飛浩隆 残酷であることが、良いことであるかのような著者の姿勢には、全く賛同できない。これを喜ぶ読者が多いだろうことも充分理解できるが、いただけない。それを除けば、大変良く出来たエンターテインメントだと思う。暴力・残酷・エッチな描写をふんだん…

おおきく振りかぶって

ひぐちアサ 『おおきく振りかぶって』の8巻までを一気に読んだ。西浦高校という公立校に発足したばかりの1年生だけの硬式野球部の話だ。主人公のピッチャーの性格が弱弱というのは珍しい。この漫画の特徴は、登場する野球少年たちがヒーローからほど遠いと…

えいご漬け

任天堂 ニンテンドーDSの『えいご漬け』にはまっている。 http://touch-ds.jp/mfs/eigozuke/ これ面白い。録音されている英文を聞いて、それを書き取るという、基本的にそれだけのお勉強ソフトだ。おまけにクロスワードやアクションゲームも入っているが、メ…

天と地の守り人

上橋菜穂子 『天と地の守り人』を読み終わったのは、しばらく前なのだけど、ちょっと言葉に表しづらい「もやもや」があって感想を書けずにいた。面白かったけど、やはりひっかかる。手放しに喜べない。充分に楽しませてもらった。特に2巻は良かった。2巻のテ…

ルリユールおじさん

いせ ひでこ 娘が小さいころは絵本をたくさん買っていた。その娘も中三で、最近は絵本は買わない。その娘が、ついおとといぐらいに、昔の絵本を取り出して読んでいた。そして「とても怖かった本が、怖くなくなっていた。でももう読みたくない」とか、「やっ…

ことばとあそぶ おととあそぶ

玉川上水にあるロバハウスに、家族でコンサートを見に行ってきた。多摩モノレールの玉川上水駅から、川縁の遊歩道を少し歩いた川のほとりに、ロバの音楽座の本拠地、ロバハウスがある。村山雄一設計の丸みを帯びた、不思議な小屋だ。お客さんは満員、70名ほ…

映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

松岡錠司 座席は満席だった。観客は高齢者ばかり。老夫婦も多い。泣かせる映画ではなかったので私としては助かった。泣かせる映画を期待した人は肩すかしを食うだろう。オダギリ・ジョーは、なかなか良かった。役所広司を彷彿とさせるアクの無い演技だ。とき…

物語の遅効性の力

前回の「物語の力」の話は、良くわからないままに書き連ねてみたのだが、頂いた反応を聞いている内に色々と気づかされた。続けて少し書いてみよう。物語には、すぐ効く成分と、ゆっくり時間をかけて効く成分の二種類が入っているということだろうか。風邪薬…

リッジレーサー4

ナムコ 光文社の古典新訳文庫『カラマーゾフの兄弟』を読んだ。すさまじい小説だ。登場人物が誰彼なく、ぎゃあぎゃあ喋るのがうるさいったらありゃしない。頭の中がわんわんいいそうだ。なんだか荒れ海を渡る船に無理矢理載せられたような、強靭な力でぐいぐ…

カラマーゾフの兄弟

ドストエフスキー

バッテリー VI巻(最終巻)

あさのあつこ 今日はあたたかで天気もよかったので、昼休み、近くの川縁まで散歩に行った。途中で本屋に寄ったら、『バッテリー』のVI巻(最終巻)が文庫で出ていたので、買い、先ほど読み終わった。終わったなぁ。このシリーズは面白かった。楽しませてくれ…

一角獣・多角獣

シオドア・スタージョン 復刊された異色作家短編集の一冊を手に取った。『人間以上』のスタージョンが短編の名手であることは有名だが、その中でも長らく復刊がまたれていたのが本作である。この本が日本に登場したのは私が生まれた年だから、なんとすでに40…

富本憲吉展

気になっていた富本憲吉展に妻と行ってきた。近所の世田谷美術館で開催されていた。以前、京都で開催されたものが巡回してきたものだ。世田美の後は、岐阜と萩だそうだ。生誕120年ということで、若き日の作品から、代表作の多くまで勢揃いしている。充実した…

ローマ人の物語 賢帝の世紀 (上)(中)(下)

塩野七生 三人の皇帝の時代が描かれている。正面突破の武人、トライアヌスが一人目、緻密かつ才能にあふれる歩く人、ハドリアヌスが二人目、そして人望厚く、温厚なピウスが三人目だ。トライアヌスに関して書かれた上巻は、ほとんど資料が残っていないため、…

スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

香山リカ 毎日新聞に、ちょっと気になる書評があったので、本屋で買ってきた。3時間ほどで読んだ。軽い本だ。なぜ香山リカが書いているのかというと、診療に訪れる患者の中に、前世を教えろなど、占い師まがいのことを、彼女(医者)に期待するのが、時々目…

本を読むわたし

華恵 図書館に行く妻について行った。入り口付近で立って待っていると、「さいきん借りられた本」のコーナーにある、赤い表紙の本が目に留まった(装丁はクラフトエヴィング商會の吉田夫妻)。「本を読むわたし」という本だ。さいきん、自分の本選びを考え直…

黒猫/モルグ街の殺人

ポー (光文社古典新訳文庫シリーズ) ポーの『黒猫/モルグ街の殺人』を読んだ。光文社の、古典新訳文庫、という新シリーズだ。現代語訳なので、とにかく読みやすい、読むのが楽である。漢文調の古い訳も雰囲気があって良いのだが、現代語だとこれほど楽だと…

六所神社に初詣

初詣に行った。なんとなく毎年、散歩がてらに行く。今年は、豪徳寺の近くの六所神社に行った。単に近所で、あまり参拝客が多くないところ、という選び方をしているので、何も知らずに出かけた。そのため参道に並ぶ列の後尾について、さて、ここは何の神様が…

本朝奇談 天狗童子

佐藤さとる もし、この本が佐藤さとるファンの踏み絵ならば、私はファンなんだな。面白かった。読む前は、なにやら漢字の多い、古くさいタイトルで、取っ付きにくいと感じた。また、表紙の絵柄も村上豊の力強いざっくりとしたもので、悪くはないが、佐藤さと…

太陽の塔

森見登美彦 第15回ファンタジーノベル大賞受賞。 太陽の塔というのは、あの万博公園にある岡本太郎の太陽の塔のことだ。あの太陽の塔にはまってしまう水尾さん、という女子大生が話の重要なキーになっている。ちょうどクリスマスのころの京都を舞台にして…

木内美羽写真展「mius」

妻と新宿のコニカミノルタプラザ http://konicaminolta.jp/about/plaza/ に行って、写真展を見てきた。コニカミノルタプラザというのは、JR新宿駅の東口を出て中村屋の手前、新宿高野ビルの4Fにある写真展示スペースだ。ほとんどは無料で、セミプロやプロの…

あたらしい教科書「コンピュータ」

編集 山形浩生 両方とも食い足りない感じがした。どっちも面白かったけどね。特にコンピュータは、食い足りない。プロジェクト杉田玄白の山形浩生だから、もっと面白いかと期待したが、まぁ教科書だものね。サウンドエシックスの小沼純一は、なかなか良い仕…

あたらしい教科書「音楽」

編集 小沼純一

カレーの法則

水野仁輔 カレーが好きだ。家で作ることも多い。妻に作ってもらうことの方が多い。よく使うのは市販のカレールーだ。昔と違って、ほんと良くできている。完成されている、っと言っていいかもしれない。ある時、材料を切ったり、タマネギをいためたりして、ス…

夜のピクニック

恩田 陸 この本は妻と娘が先に読んでいて、二人とも面白いといっていた。映画が作られているが未見だ。読み始めて最初、今の私には苦しいかなと思った。高校三年生の話なのだが、さすがに遠い。それに恩田陸特有の作り物めいた感じがちょっと鼻についた。面…

イシ ---北米最後の野生インディアン---

シオドーラ・クローバー 1916年に亡くなった一人のインディアンについての本だ。前半『ヤヒ族イシ』と後半『ミスター・イシ』から構成されている。前半は1870年から1900年ごろまでの間のカリフォルニアインディアン滅亡の歴史が書かれており、後半は1911年イ…