2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

深夜プラス1

ギャビン・ライアル ジャンル的には、スパイ小説に入れられているようだが、現役の諜報員は出てこないので、ちょっと違う。ハードボイルドタッチの冒険アクション小説か。舞台はヨーロッパ、パリから、スイス経由で、リヒテンシュタインまでの旅になる。シト…

ソラリス

レム 最近、ソダーバーグによって再映画化されたSFの古典だ。タルコフスキーのおそろしく眠たい映画としてご存知の方も多いだろう(ノーカットで見ると165 分)。私はけっこう好きだが。ところで『ソラリスの陽のもとに』というタイトルの早川SF版を読んだ人…

佐賀のがばいばあちゃん

島田洋七 もう、ずいぶん前に出版された本だ(2001年)。本屋で映画化記念のため、豪華版が出ていたので読んでみた。いい本だと思う。島田洋七あなどりがたし。すっと文が頭に入って、笑えて、泣けて、あぁそうだなと膝を打つ、そういう本だった。私は佐賀出身…

楽園のつくりかた

笹生陽子 最近、人気のある児童文学作家らしい。私ははじめて読んだ。相当に上手い。やられた、と感じた。都会の進学校から、田舎に引っ越してきた中1の少年の話だ。この少年、主人公らしからぬ、ちっとも可愛げのない、ガリ勉で、鼻持ちなら無い奴である。…

鳥類学者のファンタジア

奥泉光 性格のさばさばした、ジャズピアニストの日本人女性、通称フォギーを主人公にしたファンタジー小説だ。彼女は30代?、いい感じに落ち着いていて飄々としている。普通のファンタジーの主人公にするには、年を取りすぎているかもしれないが、この話では…

デザインのデザイン

原 研哉 真っ白にタイトル文字というストイックな表紙が目を引く。内容は、2002年に開催された「リ・デザイン展」という展覧会や、初期の愛知万博、無印良品などのデザインをあつかったデザイン論である。要するに、日常に馴染んでしまった、見えなくな…

スウェーデン式 アイデア・ブック

本屋に行くと、発想法に関する本が山のようにあって、これもその一つだ。ただ、いかにもビジネス書然とした他の本と比べて、大変お洒落で、絵もブックデザインもすてきだ。薄い本だが、内容も気が利いていて、ビジネス本臭さがなく、自分のライフスタイルに…

雲のむこう、約束の場所

新海誠 『ほしのこえ』の新海誠が監督をしたアニメ映画だ。今回彼は監督で、作画は別の人がやっている。なので、細かなところまで神経質なほどに気の配られた『ほしのこえ』に比べれば甘い作りになっている。改変世界物と呼ばれるSFだ。戦後、北海道が日本か…

のだめカンタービレ

二ノ宮 知子 (1)-(11) ... 音大に通う学生たちを描いた漫画だ(いまは卒業後に話しが移っている)。面白いという評判だったので、気分転換に全巻買って一気読んだ。これはおもしろいね。「のだめ」のキャラクターがいい。北大の獣医学部を描いた『動物のお医…

子どもとマスターする50の考える技術・話す技術 - イラスト版ロジカル・コミュニケーション-

三森ゆりか, つくば言語技術教育研究所 最初のあたりは娘と一緒に、途中からは、娘と別々に読んだ。良くできた本だ。イラストもかわいい。基礎編、実践編、応用編に分かれている。後半になるほど難しい内容になる。しかし、何より基礎編だ。ちょっと見回した…

バッテリー 3

バッテリー 3巻 あさのあつこ 妻が買ってきた文庫版の『バッテリー』3巻を読んだ。あっという間だった。4、5、6巻がどうなるのか楽しみだ。読みながら、かなり練られた話の展開であるにもかかわらず、一つ一つのシーンでの心の動きや、台詞が繊細で見事…

ビッグ・フィッシュ

ティム・バートン ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』のDVDが、ブックオフで安く売られていたので買った。映画館でみるつもりが、忙しくなって見損なっていたためだ。ストーリー展開や扱う題材が、『フォレスト・ガンプ』を彷彿とさせる。しかし『フ…

脳内現象 はいかに創られるか

茂木健一郎 『科学の方法』(中谷宇吉郎)に次の一節が出てくる。 また人間の自意識の問題などに、自然科学的な考え方を入れることも、あまり役に立ちそうもない、少なくとも場ちがいなものの考え方であると思われる。自意識のような問題は、これは個の問題…

科学の方法

中谷宇吉郎 雪の研究で有名な中谷氏(~1962年)の名著だ。和泉多摩川にあった小さな本屋に行った時に、その奥まった棚で見つけた。まだ、amazonに在庫があるようだから、普通に手に入ると思う。文章はわかりやすく、簡潔、明快だ。中学生には難しいだろうが、…

私・今・そして神

永井均 『<子供>のための哲学入門』を読んで面白かったので、同じ講談社現代新書の、同じ筆者の、この本を読んでみました。哲学の本です。これも面白かった。最初の扉のところに、カラーの絵日記がついています。 X月X日きょう僕は、白い雲が浮かぶ青空の…

リトル・フォレスト 1巻

五十嵐大介 彼のマンガの絵は、強い説得力をもつ。しかし作品の背後に流れる、心の動きはずいぶん脆い、という印象がした。特に『はなしっぱなし』『そらトびタマシイ』に強い。それが『リトル・フォレスト』では、ずいぶん安定したように感じられる。ただ通…

そらトびタマシイ

はなしっぱなし上、下

村田エフェンディ滞土録

梨木香歩 『家守綺譚』の姉妹編という位置づけになる。明治初期に、トルコへ考古学を学びに留学した村田君の経験談だ。『家守綺譚』と同じく擬古的な文体で書かれている。この擬古的な文体は上手ではあるものの、好きじゃない。それは『家守綺譚』でも馴染め…

クーの世界 1, 2

小田ひで次 中学生の少女が、毎晩連続する夢を見るという話だ。その夢の中には、むかし死んだ、血のつながらない兄が出てきて、自分のことをクーと呼んでいる。連続する夢というのは、古くからある主題で、本質は胡蝶の夢だ。ジョナサン・キャロルの『月の骨…

魔女

『魔女』第1, 2集 五十嵐大介 飛行船通信で教えてもらった漫画家の一人、五十嵐大介の『魔女』を読んだ。魔女に関する短編集だ。魔女とは、この世と、その外の世界の狭間にいる者とされている。フードをかぶっていたり、動物の頭を好んだりといった、昔なが…

蟲師 4, 5巻

漆原 友紀 『蟲師』の4巻。3巻から10ヶ月あまりで出た。多少製作ペースがはやくなった。調子出て来たかな。幕末か明治の頃の雰囲気の日本を舞台にした妖怪ファンタジーだ。「蟲」と呼ばれる妖怪?が物の怪としていっぱいいる世界で、蟲が見え、蟲に関する…

ローマ人の物語〈14,15,16〉パクス・ロマーナ

新潮文庫 塩野 七生 (著) カエサルという男が本当にいたんだな。2000年前ではあるけれど、そういう名前の男がいて、息をして、喋って、お洒落をして、馬を飛ばしていた。この本を読むと、それが実感できる。アウグストゥスという男がいた。カエサルが死んだ…

ローマ人の物語〈11,12,13〉ユリウス・カエサル -ルビコン以後-

ローマ人の物語〈8,9,10〉ユリウス・カエサル -ルビコン以前-

Arne(アルネ)8号(特集・佐藤雅彦さん)

http://www.iog.co.jp/shop/index.html Arne(アルネ)という不思議な雑誌(8号、07/1現在最新号は18号)を買いました。買ったのは福岡のジュンク堂。ちょっと小さ目の薄っぺらい雑誌で、手触りの良い上等な紙が使ってあります。おいしそうなメロンの写真が表…

グッバイ・レーニン

ヴォルフガング・ベッカー 暮しの手帖にレビューが載っていて、見てみたいと思っていた映画です。おもしろい、良い映画でした。沢木耕太郎が見事なレビューを書いていて、あれを読んだ人にはもう何もいうことがないです。ご存じない方を想定して多少導入を書…

グールド 孤独のアリア

ミシェル・シュネデール カナダのピアニスト、グレン・グールドについて書かれた本だ。評伝ではなく、作品批評でももちろんなく、不思議な位置づけにある。シュネデール自身はグールドの知り合いでも、一緒に演奏したわけでもない。彼がこの本を書くために使…

雨やどりはすべり台の下で

岡田淳 娘が読んだという岡田淳の作を、私も読んだ。娘がかなり夢中になって読んでいたらしいので、どんなものだろうという興味もあった。典型的なエブリディマジック型ファンタジーだ。メリーポピンズなどと同じタイプに属する。団地にすむ子供達と、雨森と…

バッテリー2

あさの あつこ 妻が持っていた文庫2冊を読んだ。うまいねぇ。良くできた漫画を読んでいる時のように、すーっと物語に入って夢中にさせる。そしてあっという間に読み終わってしまった。6巻で完結するらしい。たしかに傑作だ。残りを読むのが楽しみ。とくに…