2009-01-01から1年間の記事一覧

星ぼしの荒野から

J.ティプトリーJr ティプトリー晩年の短編集である。千歳烏山図書館で、文庫をパラパラとめくっていて、読むのをやめられなくなって借りた一冊。原題は"Out of the everywhere: and other extraordinary visions"である。副題にあるように、普通のレベルを越…

航路

コニー・ウィリス ジャンルはSFだろうが、ミステリーと言ってもいいかもしれない。SF味は薄い。上下巻で1300ページもあるが、会話が主体で、ドラマのERのように話がどんどん展開するので、苦なく読める。色々な意味で面白い読ませる小説だ。読み応えのある面…

パリ左岸のピアノ工房

T.E. カーハート (著), Thad E. Carhart (原著), 村松 潔 (翻訳) 「面白い本」という言い方には、いろいろなニュアンスが含まれている。それは「おいしい料理」にもさまざまな言い含みがあるのと同じだ。まず、夢中になって楽しめる小説や、ドキドキさせてく…

異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念

チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳) 最近、数学読み物にはまっていて、色んな本を読んでいる。この本は、ゼロの登場から現代に至るまでの、ゼロのさまざまな影響をスリリングに描いている。「ゼロは魚雷のように米国の軍艦ヨークタウンを襲った」という…

本を読む本

M.J.アドラー、C.V.ドーレン著、外山滋比古、槇未知子訳 原書は、“How to Read a Book” (1940年出版)、訳出は1978年だ。本の読み方を指南している。それも、「読むに値する良書を、知的かつ積極的に読む規則を述べた」本だ。フィクションの読み方も第三部で…

『トランスフォーマー』マイケル・ベイ

TUTAYAのDISCASには、インターネットを使った映像配信サービス(Windowsのみ対応)があります。物は試しと以前から見たかった『トランスフォーマー』(マイケル・ベイ, 2007年)を525円で見てみました。2Mbpsの映像がどの程度なのか、という興味もありましたが、…

SF映画マイベスト

夕食時に、SF映画って面白いよねという話を、かなり一方的に家族に話した。いろいろ作品を挙げつらっている内に、そういえば自分はSF映画が好きなんだな、と改めて思い至った。その勢いで、SF映画マイベスト、というリスト(後述)を作ってみた。みなさんの好…

「たばこと塩の博物館」

そこからBunkamuraまで降りて、スペイン坂を登って、途中昼ご飯を食べ、最後に向かったのが、たばこと塩の博物館だ。入館料はなんと100円だ。『西アジア遊牧民の染織』という民族色豊かな織物が展示されていた。そんなに古くなく19世紀中盤から20世紀後半ご…

「戸栗美術館」

そこから、途中、鍋島松濤公園で亀の甲羅干しを見て、すぐ近くにあるのが、戸栗美術館、陶磁器専門の美術館だ。初期伊万里が展示されていた。ここは財団法人で、入館料は1000円だ。初期伊万里というのは1610〜1650年ごろの色絵が始まるまでの最初期の伊万里…

「松濤美術館」

最初は、京王井の頭線の神泉駅から歩いてすぐの松濤美術館だ。我々が行った2008年5月には、『中西夏之新作展絵画の鎖・光の森』というのをやっていた。一度行ってみたかった独特な外観の建物だ。入館料は300円と区立らしい安さ。B1と2Fが小振りの展示会場に…

「松濤美術館」 「戸栗美術館」 「たばこと塩の博物館」

連休最終日、見事な雨上がり五月晴れ、渋谷に妻と出かけて、小規模のミュージアムを巡った。

モーニング・イン・リオ

セルジオ・メンデス セルジオ・メンデスの新譜です。じいさん若い。ボサノバやっぱ好きですね。それに、このアルバムは豪華絢爛たるゲストにフィーチャリングされています。どれもカッコいい。途中、ドリカムの吉田美和の歌声が聞こえて来たときには、あまり…

西田幾多郎<絶対無>とは何か

永井均 とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)" title="西田幾多郎 とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)" class="asin">私は哲学の本を読むのが好きです。なので色々手を出してはいます。ただ西田幾多郎はさっぱり分からなかった。この本の冒頭でも書か…

やさしさの精神病理

大平健 森氏の本にも引用されている1995年発行の岩波新書、名著です。ベストセラーになったように記憶していますので、既読かもしれません。精神科医の著者が、病院を訪れた数人を題材に、昔とは違う現代的な「やさしさ」について語っています。もう13年も前…

ほんとうはこわい「やさしさ社会」

森真一 ヒット作続出の注目新書であるちくまプリマー新書から一冊読みました。もし私が中高生だったら、プリマー新書を全冊読破、とかやってしまいそうだな。最近の若い人、特に大学生と話すときに、なんか妙な違和感を感じていました。良くわからなかったの…

『土曜日』

イアン・マキューアン 大分に行く時、羽田で買った。本には出会いってのがあるんだと痛切に感じさせた一冊。これはすごい。ロンドンに住む、ある脳外科医の土曜日一日を描いた本。ちょっとググればわかるように、多くの人が影響を受けている。340ページ、厚…