菊池君の本屋---ヴィレッジバンガード物語---

永江朗


ヴィレッジバンガードのことが書かれた本で、多くのページは創設者の菊池氏が、自身のノウハウを直伝するために書かれています。これを読んで、あぁやっぱりと思うことが多数ありました。実はおとといもヴィレッジバンガードに行ったので。

まずヴィレッジバンガードの本達は浅いラインナップであるということ。本当に本が欲しい時には、あの本屋は全然役に立たない。マニアックな本がおいてあるかのように見えて、実はマニアックな本は全然ない。私の勘違いか、とも思っていたのですが、この本にはっきり書かれていました。あえて深いラインナップは避けているのだそうです。深いラインナップを標榜する専門書店への嫌悪すら書かれていました。

また、なるほどな、と思ったのが書店員が一番重視しているのは、本の並べ方なんだ、ということです。どの本とどの本を並べるのか、どれを平積みにするのか、が一番の楽しみであり、ノウハウを必要とすることなのだと。みなさんも始終本屋に行かれると思いますが、棚を眺める時の自分の心の動きというのがあると思います。そう、例えばSFの棚に行って、ペリーローダンの新し目のが並んでいたりすると、あぁ、そうかと思う。これもペリーローダンが古いやつからずらずらとあったりすると、おっとそう来たか、と思う。レンズマンや、デューンの古いのがあったりすると、おいおいと思う。神林長平なんかが七胴落としあたりから揃えてあったりすると、なんてまぁ、と思う。自分のテリトリーの棚での本の構成、並べ方ってのは確かに重要だ。良い棚があれば、また行きたくなる。

他にも具体的に値段や年収が、いくらいくらと書いてあって、そういう商売なのか、と良くわかります。これも収穫。

そしてヴィレッジバンガードが何故良いのかを、やっと少しわかったような気がしました。安心して楽しめる空間になっているからですね。

2003/3/17
few01