イジー・トルンカの世界Vol.1「手」その他短編

チェコアニメ傑作選I [DVD] イジー・トルンカの世界 vol.1 ― 「手」その他の短編 [DVD]


チェコアニメのDVDを二枚借りた。一枚はオムニバス、一枚はトルンカ傑作選の最初のものだ。

印象に残ったのはトルンカの『手』、『善良な兵士シュヴェイク1/コニャックの巻』『善良な兵士シュヴェイク3/堂々めぐりの巻』、それからポヤル の『飲み過ぎた一杯』『ロマンス』である。『手』は恐い話で嫌いなのだが、印象に残るということでは外せない。残りのはどれも好きな話。

気に入ったのは人形アニメばかりで、私にとって人形アニメは相性が良いらしい。ずーっと見ながら、時間の流れ方が違うなと思った。ゆっくりと大きな畑を鍬で耕すような、がっしりしたゆっくり感がある。急いでいない。もちろん急ぐシーンもあるのだが(『手』や『飲み過ぎた一杯』など)、それでも、印象としては堂々としてゆったりである。

また、どれも丁寧な仕事だ。手抜きがない。じっくりと作られている。良い仕事なのだが、商売っ気がなくて、なさすぎて、心配になる。チェコで彼等はどうやって日銭をかせいでいたのだろう。

シュヴェイクの話は、原作があり、それを人形アニメにしたものだ。二等兵物語といった話で、戦争のない戦場での風刺をこめた作品だ。シュヴェイクという主人公が、釣りバカ日誌のハマちゃんのようなマイペースな男で、良い味を出している。風刺そのものはけっこう辛辣で、でも人形の姿、動きがかわいいのできつくない。気分転換に見ると良いと思う。

ポヤルの二作はとにかく技巧がすごい。『飲み過ぎた...』も『ロマンス』もどちらもすばらしいが、特に前者の表現にはまいった。オートバイの青年がちょっとした気のゆるみから飲酒運転をして事故を起こすまでの話なのだが、緩急のあるスピード感、光の動き、雲の流れる空、月、走る列車、などの表現が見事で、実写やCGで作るよりも、より心理的にリアルと感じた。ストーリーの他愛がないのが残念だ。よいシナリオライターがついたら、ものすごい作品ができただろう。

いずれにしろ良いDVDを貸してもらった。たしかにチェコアニメがブームになるのもわかる。


2003/6/16
few01