『パラレル・リアリティ』

ICC

ユーザインタフェース(UI)研究者の間で、関係者が多数参加しているため、ちょっと話題になっている。今日の昼に、家族と祖師谷、千歳船橋と動いて、この機会を外すと見れないかも、と思って、その足で初台へ向かった。

まずは原田さんのヴィスケット(Viscuit)が4台大きなスクリーンに展示してあった。原田さんとはWISSというUI関連のワークショップで、ほぼ毎年ご一緒して何度も酒を飲みながら話をした間柄だ。小柄なひげもじゃのお兄さんで、とにかくユニークな発想をする、すばらしいソフトウェア研究者である。

ヴィスケットは、簡単にアニメーションが作れるツール、かな。本当はもっと奥深いのだが。用意された絵などを、画面に配置して、マウスで動かしたり、仕掛けをつけると、いろいろ複雑な動きや音を出す。

彼がお子さんのために、自然な操作で、簡単に遊べるのを作ろうと思ったのが始まりと昨年聞いて、試作品のデモを触らせてもらった。私も早く自分の娘に触らせたいから、作ってくれとお願いしたものだが、ずいぶんキュートに実現されている。たぶん小学3年生ぐらいなら、かなり複雑なものが作れるだろうと思う。

<顔ポイエーシス>は、綺麗だったけど、自律的なシステムとしては、もう一歩かな。動きが遅いのが気になった。わざと遅くしてあるのかも。

<思い出の蓄え方>は、私でも作れそう。何か思い出の品を、撮影台の上に置いて、撮影すると全周囲の画像が撮影されてコンピュータの中で見る事ができるようになる。撮影台も展示してあった。回転台と撮影用の一眼レフデジカメが6台ほどで、ぐるぐる回りながら置いた物の全周囲画像を撮影してアーカイブする。高解像度のデジカメで撮影しているので、かなり細かい所まで記録されていて、データ量はかなり大きいのではないだろうか。さらに、ARマーカを使って、手で持った紙の上に画像合成して、さっきの物体が表示される。って、専門以外の人にはわからないな。それほど大したものではないので、説明省略。

は、台の上に丸いプラスチックを10個ぐらいおいて、その場所や向きで音が変わるというもの。ヘッドホンの先が太陽電池?になっていて、台の横に多数の赤外線?LEDが付いている。発想は良いけれど、音質が悪いのが致命的。

<まんがの文法を知るための実験室>は、視線検出関連では国内で有数の大野さんが、あの夏目房之介と組んだ展示で、漫画を読む人の視線の動きを記録できる装置である。体験した。『ブラックジャックによろしく』『怪物くん』『あたしんち』と、あと2つほどPCの画面に表示されてそれを読むと、私がどういう風に読んだかが表示される。少年漫画、少女漫画、アメコミとか、漫画の種類によって、けっこう読み方が違うな、と思った。アメコミから、突然少女漫画に変わったときは、辛かったな。


『パラレル・リアリティ』

たまたま15時から藤幡先生が、石井先生や細野晴臣と組んだパフォーマンスがあったので、参加した。この日は藤幡先生だけで、石井先生や細野さんはいなくて一人でがんばって喋っていた。細野さんは何で参加しているのだろう?単に喋りに来ただけ?石井先生は例のごとく、雲をつかむようなプレゼンを残していっていた。パラレル・リアリティというコンセプトは石井先生のアイデアらしい。

1時間30ほどもあったのだが、説明がけっこう難しい。

会場の中心に低い舞台があって、左にけっこう大きな菩提樹ユーカリ?の木が逆さに吊るされている。本物の木らしい。びっくり。プロジェクタが9台天井に吊るされていて、四方の壁面にいろいろな映像が映し出された。天井から水がポトン、ポトンと落ちて、したにあるドラムにあたって、音がする。会場はそんな感じで、最近、藤幡先生がやっているいろいろな映像関連の活動を総括して紹介してくれた。ただ視聴覚交換マシンとか、GPS付きのビデオの映像を、3D空間で再現するとか、オムニビジョンを使うとか、なんか寄せ集めっぽくて、今ひとつ関心しなかった。面白かったけど。

考え方のポイントは、視点の多様性を作り出して、体験できるようにすると、それが新しいコミュニケーションや理解の仕方に結びつく、もしくは混乱を生むことで、さらに新しい視座を生む、というような所か。

なお、音はさすがだったね。マイクやスピーカの選定・配置が見事です。音を扱うなら、このぐらいのPAは欲しいよね。


2003/11/9
few01