『映像とは何だろうか --テレビ制作者の挑戦--』

吉田直哉岩波新書
映像とは何だろうか ― テレビ制作者の挑戦 (岩波新書)


映画部という同好会の仲間である職場の同僚から借りた。面白いから、と言われて半ば強引に押し付けられたのだが、これは確かにすごく面白かった。(疑ってごめん>Bさん)

NHKでドキュメンタリーや、大河ドラマを作って来たディレクターが著者である。冒頭の創価学会第二代会長の戸田城聖の逸話からしてすごい。次の隠れキリシタンの話、やくざの話、インドの話も、とにかく出てくる話が、みな面白い。ドタバタと現場を走り回る著者の姿が熱気をともなって感じられる。
映像製作者としてのすばらしい嗅覚をもった人のようだ。天性の才能だろうな。

どれも印象的だが、個人的には武満徹と組んだ巴文の話がすごいと思った。家紋の形に着目して映像作品を作った話だ。巴文はフーガだと?、ゾクゾクするねぇ。

映像の「実体のない」という性質、割り符としての登場人物、廃墟と映像の親密さ、など、興味深い考察にも満ちている。特に個人的には「割り符」という司馬遼太郎の言葉が気になる。インスピレーションを刺激する。


2003/11/9
few01