攻殻機動隊 Stand Alone Complex

神山健治
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 04 [DVD]


有名な近未来の東京を舞台にしたSFアニメだ。漫画が原作で映画があるが、このシリーズは衛星のテレビシリーズだったもので、来年から第2シリーズがはじまる。もともとテレビ放映だけを目的としたものではなく、後でたっぷり稼ぐことを想定してたっぷりお金をかけて作られている。

以前Vol. 3を見てなかなか面白かったので、今回Vol. 2と Vol.4を見た。まだたくさんあるので、のんびり残りを楽しもうと思う。来年正月からは地上波でも放映されるらしい。Vol.3の時も思ったが、「笑い男」にまつわるメインストーリーが印象的だ。 Vol.5以降でも展開されるのだろう期待したい。ミステリー仕立てなので、中身は伏せておく。マトリックスと同時並行で見たので、比較してしまったが、近未来(もしくはマトリックス成立前の状態)を描いているため、全体にハイテクである。

これはSF一般に言えることだが、遠未来になるほどファンタジーに近づきローテクが主役になり、近未来ほど現在我々が目新しく体験しているハイテクが主役になる。それはテクノロジーというのが現実の具体的な問題を前にして発展するという宿命を負っているからだろう。遠未来では、マトリックスのような超技術を設定に入れてしまいがちだが、そうすると、具体的な問題を想像できなくなる、つまり何でも、空を飛ぶ事すらできてしまう。いきおい製作者が恣意的に作ったルールに従って登場人物たちは動くことになり、つまりはファンタジーとの境が薄くなる。テクノロジーテイストなファンタジーになる。それに対して近未来は現在発生している様々な現実問題を敷衍する事で問題を想定でき、そこに新しい技術、それも現在の技術の延長線上をイメージできる。ただし、やがて現実が追い抜き「過去から来た未来」になってしまう運命にある。

作中にゴーストダビングという話が出てくる。映画では、ネットに人格を転移する話が出てくる。つまりこれらは大規模な計算機(要素はシリコンではなさそうだが)に人格をコピーできるという話である。しかしロボットではない。ロボットにはゴーストがない。ゴーストはプログラムの表層には現れない、プログラムの振る舞いとして実現されている、ある種の一貫性である。そしてゴーストのあるなしが人間かそうでないかの区別になっているのだが、果たしてその区別はどれほど確かなのか、また意味があるのか。


2003/11/29
few01