竜退治の騎士になる方法

竜退治の騎士になる方法
岡田淳


大阪の小学校を舞台にした、関西弁を話す龍騎士の話だ。

学校に忘れ物を取りに戻った主人公は、ボール紙の盾と剣を持つ日本人のおっさん「ジェラルド」に出会う。

好きだね、こういうの。やっぱ私は岡田淳に相性が良いようだ。メルヘンや幻想文学、今流行りのハイファンタジーではなく、いわゆるファンタジーである。

ファンタジーとは論理だと、私は思っている。メルヘンや幻想文学はロジックではない。ファンタジーを描くには作家は徹底して、自分の描く話に納得しなければならない。少なくとも作家本人にとっては腑に落ちるように作らないとファンタジーにならない。「そういうのもあったらいいなぁ」というような憧れではなくて、小説世界を周りからしっかり固めて、「そうに違いない」と自分を納得させることができて、ファンタジーが成立する。ずいぶんストイックなスタイルの小説だ。

その作者の納得を、読者が自分の納得にできると、読者にもファンタジーが成立する。それは珍しいことか?、かもしれない。優れたファンタジー作品とは、多くの人に、架空への納得を与える小説のことだとも言える。

岡田淳の作品は、それほどに強い納得力を発してはいない。でも私には実に良く腑に落ちる。つまり岡田淳本人と私との間に通用する「納得の方程式」がある、ということだ。そういう作家がいて、新作を出してくれる。これは嬉しい。

小学生たちの描写が良い。小学6年生という(我が家の娘も4月からそうだが)微妙な年頃を良く掴んでいると思う。子供を一歩抜けそうな微妙さ。思春期の入り口に立った不安感。

読んでしまってから、映像化したいと思った。これならちゃんと作ればファンタジー映画になるかもしれない、と思った。