The Last Samurai
監督: ビリー・コノリー
DVDを借りてきて見た。なんとも舌足らずな、不思議な映画だな。沢木耕太郎が暮しの手帖で言っていたように、架空の世界の物語なんだね。ほとんどは明治維新の頃の日本を踏襲しているのだけれど、そのあたりを舞台に架空の世界を描いている。描かれた世界はシンプルだ。
特に勝元らの住む桃源郷のような山間の村は、どの時代にもどの場所にも存在しなかった一種の理想郷だ。心の故郷、のようなものか。良い映画か、と言われると首を傾げてしまうが、理想郷を美しい映像で見せてくれたので、見てよかったと思う。
時代劇というのは、そもそもファンタジー性を持っているのだが、それをこれほど明示的に使ったドラマは始めて見た。架空世界の一貫性を確立するために、武士道や日本の風土が使われている。行きて帰りし物語のスタイルを忠実になぞっている。かなりおいしいファンタジーだ。
その目で見ると、一つ一つのアイテムが一旦現物から離れて吟味され、世界観に合うように丁寧にアレンジされているのがわかる。木刀、日本刀、和服、寺院なども、それぞれもう一度「The Last Samurai」の世界にあわせて再構築されている。見事だと思う。残念ながらシナリオの完成度が今ひとつで、多少もたつくのが玉に傷だが、良い絵を見せてもらった。