ビッグ・フィッシュ

ティム・バートン
ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション [DVD]


ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』のDVDが、ブックオフで安く売られていたので買った。映画館でみるつもりが、忙しくなって見損なっていたためだ。

ストーリー展開や扱う題材が、『フォレスト・ガンプ』を彷彿とさせる。しかし『フォレスト・ガンプ』の、表面的にあっけらかんとしていながら、皮肉のこもった、明快な印象とは違い、もっと微妙な所をついてくる映画だった。

ほら話が好きで、自分の経験談を皆ほら話にしてしまう父と、その父に反発を感じる息子の話だ。子供の頃は、息子も素直に父の話を信じていたのだが、いい大人になり結婚した今では、父の過去が彼のほら話に隠されて見えなくなっており、信頼できなくなっている。

父の話は映像化されて、現在の映像と交互に現れる。過去の父を演じるのがユワン・マクレガー(スター・ウォーズ新三部作のオビ=ワン・ケノービ)だ。

父の昔話には、かなりの程度「ほら」がまじっているのだけれど、何もかも「ほら」ではない。その混じり具合が不思議に魅力的である。少なくとも彼にはそう思えたに違いない。そう見えたに違いない。だんだん、そう思えて来て。そして、そう思えて悪いわけがあるのか、という気がしてくる。

事実と夢想を峻別するのが現代人の基本的な思考パターンだ。裁判官が事実と夢想を混同したのでは、司法は成り立たない。ただ、この思考パターンの起源は必ずしも古くない。

自分が見た事、感じた事を、自分に正直な形で受け取り、表現すると、ビデオカメラで撮影したのとはまるで違う世界になるだろう。それは嘘ではなく、そういうものであって、また、それで良いのではないか。

映画としてベストかというと、それほど完成度の高い映画ではないと思う。でも、いいね。私は好きだ。