バッテリー 3

バッテリー 3巻
あさのあつこ
バッテリー 3 (角川文庫)


妻が買ってきた文庫版の『バッテリー』3巻を読んだ。あっという間だった。4、5、6巻がどうなるのか楽しみだ。

読みながら、かなり練られた話の展開であるにもかかわらず、一つ一つのシーンでの心の動きや、台詞が繊細で見事なのに驚く。小説は、全体の「構成」と、それを形づくる個々の「シーン」によってできていると思う。そして個々のシーンは、細かな心の動きとそれを表す台詞、しぐさ、などからなる。私は、シーンの描き方が上手い作家と、構成でうならせる作家というのがいると思っていて、両方を上手くやるのは難しい、と感じている。繊細な心の動きに強くひっぱられる作家は、それを話を動かすエンジンとしてしまうため、構成が行き当たりばったりな、弱いものになりがちだと思う。また逆に、構成を重んじる作家は、自分が考えた構成に、登場人物の心の動きを合わせようとするため、登場人物の心の動きが不自然なものになりがちだ。

この『バッテリー』は、両方がうまくいっている珍しい例だと思う。どちらかというと、シーンを重んじる作家だと思うが、構成もがっしりしていて見事だ。