雲のむこう、約束の場所

新海誠
雲のむこう、約束の場所 [DVD]


ほしのこえ』の新海誠が監督をしたアニメ映画だ。今回彼は監督で、作画は別の人がやっている。なので、細かなところまで神経質なほどに気の配られた『ほしのこえ』に比べれば甘い作りになっている。

改変世界物と呼ばれるSFだ。戦後、北海道が日本から分断されたという別の世界の話だ。青森の学生の話で、そこからは北海道にそびえ立つ巨大な塔がいつも見える。学生の日常が描かれ、そこに戦争の緊張感が漂う北海道との国境がある。独特の詩的な映像がいい。なかなか秀作だと思う。

しかし、すでに多くの人が書いているが、おまけとして入っているパイロット版の完成度がやたらに高い。その完成度からすると、本編は、かなり水増しされた平凡な作品になってしまったように思えてしまう。惜しいな。ビジネスとしては成立しなかったろうけれど、あのパイロット版を新海氏が自身で時間をかけて完成させていたら、アニメ史上に残る傑作になっていたろうと思った。