デザインのデザイン

原 研哉
デザインのデザイン


真っ白にタイトル文字というストイックな表紙が目を引く。内容は、2002年に開催された「リ・デザイン展」という展覧会や、初期の愛知万博無印良品などのデザインをあつかったデザイン論である。

要するに、日常に馴染んでしまった、見えなくなってしまった視野の曇りを取払い、本質をとらえ直そうとする行為について、つまりは、アイデア、を語る本である。

見慣れたものを未知なるものとして再発見できる感性も同じく創造性である

様々に魅力的な、彼が関わった事例をあげながら、しかし結局はいかに、ふつうの視点から自由になるのか、を繰り返し語っている。

むしろ耳を澄まし目を凝らして、生活の中から新しい問いを発見していく営みがデザインである

デザイナーは企業から金をもらって物をつくる仕事人でありけっしてアーティストではない。さらに現代の企業は、単品管理を初めとして、細かなマーケティング(曰くスキャン)をして製品開発をしており、デザインの仕上がりは、デザイナーや企業の力量を表すというよりは、実は、消費者のレベルを明確に示すことになる、と彼は書いている。そこで「欲望のエデュケーション」という言葉がでてくる。

消費者自身が、より快適で素敵なものを得たい(欲望)という高い美意識を目指すのと同時に、市場という畑を肥やしてゆけるような仕事がデザイナーにも求められている、ということらしい。

多少、言い方に高踏的な感じが気にはなるが、少なくとも、これを読んだあとは、自分が作ろうとするもの、選ぼうとするものが気になる、そういう本である。