カレーの法則

水野仁輔
スパイスマジックでつくる カレーの法則


カレーが好きだ。家で作ることも多い。妻に作ってもらうことの方が多い。よく使うのは市販のカレールーだ。昔と違って、ほんと良くできている。完成されている、っと言っていいかもしれない。

ある時、材料を切ったり、タマネギをいためたりして、スープで煮て、おいしい野菜スープの状態にまでしてから、「こくまろ」のカレールーを入れたところ、あれっと思った。「こくまろ」の味になっている。そりゃ、あたりまえ。

それまでの野菜スープの味がなくなってしまって、「こくまろ」の味になっている。もちろん不味いわけではなくて、美味しいのだけれど。カレールーの完成された味が支配してしまって、どう作ろうと「こくまろ」になってしまう。

ちょっと寂しい感じがした。私はもっとシンプルなカレーを楽しみたかった。野菜スープの段階までは、まだ、人参の、じゃがいもの、たまねぎの味がしていた。ところが、それを奥深さと広がりを持ったカレールーの味が覆い尽くしている。

じゃぁルーから自分で作れよ、という話になるかもしれないが、香辛料を集めて、すり潰して作るなんて、ちょっと遠すぎる。そんな本格的なものが食べたいわけじゃない。インドや東南アジアでは普通に毎日の食事として食べてる筈だから、そういうものでいい。

本屋でこの本を見つけて、良くあるカレー蘊蓄本か、と思ったが、ちょっと違った。全体にレシピが簡単だ。それでいて、シンプルなカレーのおいしさを味わえる。

私が気に入ったのは以下の2点だ。

(1) タマネギを飴色になるまで炒める必要は無い
(2) 市販のカレー粉+香辛料1つからスタート

自分が理系だからだろうか。基本的なルールを教えてくれるので、気負わずにアレンジが簡単にできる。また手間が極力省かれているので、そこらにあるもので軽い気持ちで始められる。それでいて美味しい。

昨日、冷蔵庫の残り物で作ったのは、じゃがいも、たまねぎ、ベーコンとゴーヤのカレーだ。ショウガとニンニクを少し多めにして、簡単に作ったが、タマネギを炒めることもせずに、すぐできて、それでいてうまい。材料とカレーの味が単純に味わえるのがいいね。

シンプルなカレーが食べたい、だけど、面倒くさがりの人にお勧めする。

彼のブログにこの本の紹介が載っている。
http://blog.excite.co.jp/tokyocurry/4160819