スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

香山リカ
スピリチュアルにハマる人、ハマらない人 (幻冬舎新書)


毎日新聞に、ちょっと気になる書評があったので、本屋で買ってきた。

3時間ほどで読んだ。軽い本だ。なぜ香山リカが書いているのかというと、診療に訪れる患者の中に、前世を教えろなど、占い師まがいのことを、彼女(医者)に期待するのが、時々目立つようになってきたからだそうだ。

軽い本だけれど書かれている内容は根が深く、重い、と書評に書かれていたが、その通りだった。軽い新書なので立ち読みで良いかもしれない。

世の中、スピリチュアルブームである。その中心にいるのが、江原啓之(私と同い年)と、細木数子であろう。始終テレビに出てきて、本屋にたくさん著書がならんでいるところを見ると、時代の寵児だろうか。

私は、ファンタジー小説や、幻想文学、SFなどが好きなので、特に幻想小説から、溝をちょっとまたいだところにあるスピリチュアル本にも興味を感じることがある。パウロ・コエーリョの『アルケミスト』『星の巡礼』はスピリチュアル小説と位置づけて間違いないと思うが、フィクションとして詩的で楽しめる本だった。

また、フィクションに触れる事の少ない人、ファンタジー幻想文学に興味の少ない人に、自分の興味を話す時に、スピリチュアル本が好きな人と勘違いされることが時にあるので、相手を見て自分の好きな本のジャンルについて触れるようにしている。

私は、昨今のスピリチュアルブームには、ちっともピンと来ないし、降霊術やイタコなどにも、あまり興味が無い。なので、「スピリチュアルにはハマらない人」に分類される。今までは、まぁ害はなかろうと思って無視していた。

ただ、この本に書かれているように、実はハマる人と、ハマらない人の境界は曖昧だ。例えば科学者は、合理的に物を考えるのが仕事なわけだから、スピリチュアルからは遠そうに見えるが、著名な科学者に、その手のことを喋る人は案外と多いし、オウムの例を見れば、実は紙一重だとわかる。

この本には、昨今のスピリチュアルにハマる人に、いくつかの特性があることが書かれている。


曰く、問題は自己責任化
曰く、現世利益追求を肯定
曰く、利他的なことには無関心


なるほどなぁ、と思った。まぁ、占いだから。しかし、こういう風潮が一般化するのは、寂しい世の中だなと思う。

しばらく前から、ファンタジーもブームだと思う(それも、けっこう長い)。その背景にも、実のところ、この本に書かれているのと同じような「空気」があるのかもしれないと思った。私は、ファンタジー小説を、宗教本と一緒くたに扱われると、かなり困惑するのだが、端から見ると違いは少なく、またファンの求めているものには大差ないのかもしれない。