本を読むわたし

華恵
本を読むわたし―My Book Report


図書館に行く妻について行った。入り口付近で立って待っていると、「さいきん借りられた本」のコーナーにある、赤い表紙の本が目に留まった(装丁はクラフトエヴィング商會の吉田夫妻)。「本を読むわたし」という本だ。さいきん、自分の本選びを考え直している最中なので、気になって手に取ってみた。華恵さんという女性の本だ。次の文章ではじまる。


国際子ども図書館の中で、本を抱えて笑っているわたしがいる。ついこの間撮った写真なのに、なぜか懐かしい。撮影ではいつも「大きく笑う」のが苦手で、ついガチガチの笑顔になってしまうのに、この時は全然ちがっていた。たくさんの本に囲まれて、自然にうれしさが表情に出ている。さっぱり・はっきり・すっきりとした顔。「これがわたしだ」と思える。四歳の頃のわたしにそっくりだ。

ここを読んで、著者が素直に本を愛していることが、すーっと伝わってきた。それと、幼児の頃とは何かが違っていて、それに戸惑いと、多少の諦めを感じていることも、この短い文章で伝わってくる。これは借りてゆこうと思った。

私はさいきん「本の選び方」について色々考えている。その中で、まだうまく整理できずにいるのが、「本との出会い」だ。本はもちろん目的をもって読むけれど、意思だけで合理的に選べるほど簡単ではない。本には出会いがあるし、出会いが必要だ。その出会いは、時に、向こうから偶然のようにやってくる。ぽんとやってきて、その時、私の心がぽんと反応する。

この本には、彼女が出会った色々な本のこと、どういう風に出会ったか、その頃どういうことがあったか、が書かれている。絵本が多い。というのも彼女が就学前や、小学校の時の話が多いからだ。『マドレーヌ』『てぶくろをかいに』『はせがわくんきらいや』など。

読んでいると、情景や、彼女の気持ちが、すーっと伝わってくる。読んでいる私の心がシンクロする。ちょっとした微妙なうれしさや、せつなさが伝わるので、一つ読むのが軽くない。書いてある文章は平易で、語り言葉は素直で、大変読みやすいのだけれど、心が動かされるので、軽く読み飛ばす事ができない。

本を借りた後、家族で成城学園前のDEAN & DELUCAに行って、その本を読んでいる時に、妻から、著者が年端の行かぬ少女であることを聞いた。奥付の著者紹介を読むと、たしかにいま15歳だ。モデルとして、またテレビなどで良く知られている人らしく「ガチャガチャポン」のhanaeさんだと娘も知っていた。驚いた。栴檀は双葉より芳しか。