一角獣・多角獣

シオドア・スタージョン
一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)


復刊された異色作家短編集の一冊を手に取った。『人間以上』のスタージョンが短編の名手であることは有名だが、その中でも長らく復刊がまたれていたのが本作である。この本が日本に登場したのは私が生まれた年だから、なんとすでに40年以上昔というわけだ。アメージングストーリー全盛時代か。なお、印象的ながら、かなり悪趣味な話が多数混じっているので、それが嫌だと思う人もいるかもしれない。ただ冒頭の短編「一角獣の泉」は見事だと思う。ファンタジー好きなら、これを読むだけでも買う価値がある。どの短編でもそうだが、とにかく世界へ引き込む力が強力だ。読者の足をつかんで一気に沼の底にドプーンと引きずり込む、といった強さだ。あまりに深く潜るので、本から離れた時のギャップが大きく、息継ぎが苦しい。溺死にご注意。