錯覚する脳とホワイトヘッド (その1) 明かりの色

錯覚する脳―「おいしい」も「痛い」も幻想だったホワイトヘッドの哲学 (講談社選書メチエ)


明かりに色があることは誰でも知っている。太陽の光は白く、真夏などは青白いと思えるほどだ。もちろん眩しさ、光の強さもあるが、色もある。朝や夕方は赤い。赤黄色いという感じか。季節や天気、空気によってずいぶん色は変わる。冬の関東の朝夕の太陽は格別だ。電球にも色がある。白熱球はちょっとオレンジっぽい色だ。もちろん白に近いのや、青白いのもあるが、普通に買って使う60Wとかの白熱球は、真っ白ではなくてオレンジっぽい。それに比べると、蛍光灯は白いのが多い。ろうそくの光は黄色から橙色に近い。舞台照明では、ライトの前に色フィルタをくっつけて、色つきの光源を作り出す。赤や青や、さまざまな色の光が投影される。またレーザーには赤、緑、さらに青紫色のレーザーまで作られている。

この明かりの「色」とは、何だろうか。

光というのは電磁波(でんじは)の一種だ、というのは学校で習う。ただここでは、電磁波のことを詳しく知る必要はない。空中を伝わる波の一種だというのが分かっていればいい。波なので、水面の波とおなじく、波の山と、波の山の間隔と、それから山の高さにいろいろ違いがある。さざ波は間隔が狭くて、高さが無い。大波は間隔が広くて、高低差がとても大きい。この山と山の間の長さを波長(はちょう)という。こっちは色の話を分かるのには大事だ。山の高さを振幅(しんぷく)という。こっちは光の強さに関係するけれど忘れてもいい。

小学生の時に、プリズムで太陽の光を虹にしたことがあるだろう。プリズムって秘密めいて、いいよね。白い太陽光が、赤やら黄色やら、緑やら、青やらのグラデーションになる。継ぎ目の見えない大変綺麗なグラデーションだ。この赤は、波長が長い。青は短い。赤の山と山の間の長さは、700nm(なのめーとる)ぐらいだ。700nmってのは、0.0007 mmだ。すごく短い。青は、430nmぐらい。赤より、さらに短い。もしちょうど波長が700nmの光があれば、その光は赤く見える。430nmの光があれば青く見える。

色と波長は関係がある。

プリズムは、きれいに面が削られている。光は、この面を通るときに曲がる。その曲がり具合が、波長によって違う。波長が短いほど曲がりやすい。プリズムから出てくる虹は、曲がり具合が違う光が並んでいる。グラデーションに隙間がないので、太陽の光には長短さまざまな波長の光が漏れなく入っているのがわかる。虹は波長が長い方から、短い方へ行儀良くならんだ光だ。それが混ぜ合わさって、白い太陽の光に見えている。電球の光も、同じようにプリズムを通すと虹になる。ただ太陽の光ほどきれいな虹にはならない。赤が強くて、青が弱い虹になる。蛍光灯の光から虹を作ることもできるけれど、これはあまり筋がきれいじゃない。赤が暗くて、緑や青が強い虹になる。最近は太陽光に似た色の電球や蛍光灯もあるけれど、虹にしてみると太陽光とは大分違うのがわかる。プリズムがない人はCDやDVDに反射する光で虹を見ることができる。

明かりの色は、詳しく見ると、この虹のように色々な波長の光が混ざったものだ。虹は明かりの正体と言ってよいと思う。なぜ違う虹になる光が、同じような白い色に見えるのかは後で話そう。

次は物の色のことを話す。

(つづく)