らくだこぶ書房 | 21世紀古書目録展

クラフト・エヴィング商會


新年会の片づけを済ませて、映画部の連中と成城でお茶した後で、駅の改札に立って、ふと時間が空いていることに気づいた。このまま研究所に戻ってプログラミングを続けることもできる。でも今を逃したら行けないかもしれない。そう思って新宿へ向かった。新宿紀伊国屋の画廊へ。クラフト・エヴィング商會の展覧会へ。

紀伊国屋の階段を上りながら、がさがさとしたプログラミングの頭で、その自分がうまく受けいれることができるか、少し不安があった。しかし静かに音楽の流れる会場に入ってすぐに、大丈夫だとわかった。温泉につかるようにじんわりと心にあたたかみが昇ってくる。大きなガラスの標本瓶に入った砂にまみれた古書、これが21世紀古書目録の本物(?)か。

丁寧に撮影された未来の古書たちのポートレート写真と、標本瓶に入った本物達、標本瓶にはどれも白い砂が堆積している。バッハの無伴奏チェロ組曲か。ラジカセなのに、けっこういい音だ。一冊一冊添え書きを読み、よそいきめいたポートレートを眺めながら、自分の感受性がぴったりと寄り添って動いているのがわかった。いい感じのシンクロニシティだ。

写真と実物の対比がなかなか面白い。特に写真からイメージされる大きさと、実物の大きさはかなり違う。特に「その話はもう、3回きいた」と「あたらしいくだもの/なつかしいくだもの」が違った。この感じはどこかで覚えがある。そうだ、「嘘っぱちの本物」、グレゴリーバーサミアンだ(飛行船通信000814号参照)。

いま新宿のSEATLE'S BEST COFFEEでこれを書いている。さて暗くなってきた、そろそろ家に帰って、会場で手に入れた本書をひもとくとしようか。


2001/01/04
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