サトラレ

監督・本広克行


踊る大捜査線スペーストラベラーズの本広氏の「サトラレ」を見た。ノリはそれらに近いが、少し押さえられており絶妙なバランスが保たれている。「踊る...」や「スペース...」でもそうだが、身近な人情話を、やたらに大げさな演出とからめて独特のおかしさ、醍醐味、不思議な魅力を演出するのが彼のスタイルなのだが、この映画では、それが的を射たアイデア(原作はマンガか?)と結びついて本広ドラマの完成型と言える仕上がりになっている。

サトラレ、というのは自分の考えている事が周りの人に筒抜けになってしまう超能力者である。相手の考えている事がわかるわけではない。そして今までに日本で7人しか発見されておらず、そのいずれもが桁外れの天才であるため、国家財産として保護されている。が、しかし最初の一人が自分がサトラレであることを気に病んで自殺をしたため、決して当人にサトラレであることを知らせてはいけない、という法律が定められている。

本広監督はこのアイデアに出会ったときに、たぶん、まさに自分のためにあると思ったのではないだろうか。それほど彼の作風にぴったりだ。例えば「踊る...」や「スペース...」では話自体にいくぶん大げさな所(殺人、誘拐、銀行強盗など)があるため、ともすると観客からの遊離、嘘っぽさが鼻につきかねなかった。この作品では、扱われている題材(シナリオ)は、より普通の身近なものに終止しており、逆にそれが本当らしさに繋がっている。この感じは「千と千尋の神隠し」に似ている。

泣くぞ。ティッシュを用意すべし。

春、桜の季節は終わりかけているが、いまの季節にぴったりの清々しい後味を残す良い映画だった。


2002/3/31
few01