ファンタスマゴリア・デイズ

たむらしげる


いまでは、ほとんど省みられないCD-ROM作品というジャンルがあった。今もそれなりには作られているのだろうが、不幸にして良い作品を知ることがない。衰退の原因はWebが表現手段としてCD-ROMに匹敵する力を得た点と、Playstationをはじめとするコンシューマゲーム機の進展によるだろう。 それら初期CD-ROM作品の中に、GADGETやPikkle's Bookと並んで『ファンタスマゴリア』という傑作がある。

ファンタスマゴリアとは、たむらしげるが創作した星で、いろいろな人や変な生き物がたくさん住んでいる。CD-ROMをセットすると、パソコンの中にぐるぐる回るジオラマのようなファンタスマゴリアが現れる。海、砂漠、氷の街、走る電車、我々はいろいろな所を巡って、さまざまな現象を見たり、または見れなかったりする。これに、はまった人は多いだろう。クリスマスにしか起こらないイベントなど、『どうぶつの森』はこの作品を一つのモデルにしたのは間違いないと思われる。

本書『ファンタスマゴリア・デイズ』は、このファンタスマゴリアを舞台にした漫画である。1巻、2巻の目次は以下の通り。『ファンタスマゴリア』をやったことのある人なら、「あぁ、あれか」と思い当たるのではないだろうか。

 酒場への長い道
 流星掘り
 氷河竜
 フライング ログ
 キノコの森
 星魚釣り

 時の砂漠
 カクタス・エアライン
 海王の星
 ソープあるいは密造酒
 地底の遺跡
 ガラスの海

今回は、フープ博士と助手のロボットであるランスロットが、ファンタスマゴリアの上を珍道中する話になっている。CD-ROMのファンタスマゴリアは、いつまでも変わらぬ世界を静かに見続ける作品だが、こちらの漫画では、ちゃんと話の流れがあり、くすっとした笑いがあり、ほろりとさせる所あり、で親しみのもてる好作品になっている。

どの話も、たむら世界にすぅっと入ってゆける気持ちの良いものだ。


2002/1/5
few01