じつは、わたくしこういうものです

クラフト・エヴィング商會


クラフト・エヴィング商會の新作である。今回は実在の人物のポートレートに架空の職業をあてはめて小文を付けたものだ。「時間管理人」「果物勘定師」「月光密売人」などの、ふざけた職業になっている。実在の人物の写真は、どうしてもその人の人となりを強烈に印象づけるので、あてはめられた職業とのズレが大きくて多少苦しかったが、なかなか楽しく読めた。AXISという雑誌が昨年、毎号著名なデザイナーの写真を表紙にしていたのだが、名前がなくてもかもし出す雰囲気が強烈で、持っている能力、職業に裏打ちされた印象がすっくと伝わってきた。上着の選び方、目の向け方、体の曲げ方などの細かな所に、その人が職業柄身に付けた癖が滲んでいる。この『じつは..』に出てくる人たちは、見るからに書物がらみの人たちで、つけられた手仕事職人や、請負仕事をやるような感じにはどうしても遠い。その無理が気になった点だ。しかしそれも承知で作られた本のようにも思えて、結果十分に楽しむ事ができた。なお個人的には「冬眠図書館のシチュー当番」が一番良かった。


2002/7/17
few01