増補 ドイツ文学案内

手塚富雄・神品芳夫著
岩波文庫別冊3


かなり網羅的(著者は網羅的になるのを避けたとは言っているが)な文学史である。特定の視点で作品を整理したというよりは、案内と題している通り、時代を追って色々観光案内してもらうような書籍である。ゲーテに多くのページが割かれているのは当然として、第二次大戦以降も神品氏によって追加されている。扱いは小さいが当然エンデも出てくる。これを読むとロマン派や写実主義の時代の全体に明るく夢想的な雰囲気と、自然主義以降の暗くまじめな雰囲気とが対照的である。


学生時代、文学史は眠たく苦手であったが、目的を持って読めば色々興味深い事がわかるのだと、今更ながら知った。例えばグリム兄弟がどういう背景で出現し、どういう活動をしたかなどを知ると、改めて彼らの作業の大きさがわかる。またゲーテをはじめとする超有名人がどういう時間的前後関係にあるかを知る事も大きな発見だった。


ファンタジーの発生史という観点から見ると、幾人かの確認すべき重要人物およびその作品がピックアップできたのが収穫である。しかし余裕の無い今(何故余裕がないと感じてしまうのか)、彼らの作品に浸るには、あまりにギャップがあり過ぎるようにも思う。

ピックアップ:
ティーク『金髪のエックベルト』『長靴をはいた牡猫』
ノヴァーリス『夜によせる賛歌』
ブレンターノ『ゴッケル物語』
グリム『ドイツ伝説集』
シャミッソー『ペーター・シュレミールの不思議な物語(影を失く
した男)』
フーケ『ウンディーネ
ホフマン『黄金の壺』


1999/4/8
few01