蛙男

清水義範


さっと読み終わりましたが、秀作です。ファンタジーですね。切ない話です。最後に電話をした彼女が、どういう気持ちだったかを想像してしまい、それが読後ずーっと心に引っかかり続けました。

男が蛙男になってしまう話です。デザイン関連の小さな個人会社につとめるデザイナーの主人公が、だんだんと蛙男になってしまいます。お笑い小説ではなく、ストーリーが展開しながら進行し、細かな描写が的確に添えられている、普通のファンタジー小説です。ただ作風から行くと、筒井康隆などのかつての日本SFを彷佛とさせます。SFと呼ぶ人もいるかと思います。恋愛の話が中心で、ベッドシーンがいくつもあります。清水らしいペーソスといいますか、苦笑いさせられる所もあったりして、楽しみの幅が広い小説です。これもパスティーシュの一種でしょうか。そう言えなくもないけれど、普通の小説として読んだ方が自然な感じがします。

印象に残っているのは、プールでの出会いのシーンです。


2003/3/4
few01