午前、午後

市川実日子
午前、午後。


近所に最近できた比較的大きな本屋に行った際に、ドラマ『すいか』で気になった役者さんのエッセイ集みたいのがあったので、買ってみた。読んで初めて、いろいろな映画に出てすでにずいぶん話題になった役者さんだったのだと知った。『blue』『とらばいゆ』とか面白そうなので、その内にレンタルしてきて見てみよう。

日記風に書かれた日常雑記と、彼女が撮影した写真で構成されている。日常雑記の方は、手あかのついた詩的な表現を無意識に使ってしまう所など、かなり下手だが、そこから垣間見える感性や心の動きが、なんとも魅力的である。あっさり数十分で読み終わったが、何度か読んでみよう、という気がする。何故だろう。何か自分の日常生活で通り過ぎてゆく、けっこう個人的には大事なこと、先日書いた、子供の頃親父の運転する軽自動車の後席で寝転がって見た窓から見える空のような、そういう、するすると消えてゆくようなものを、微かにひっかけて定着している文章に思えるからだろうか。

写真は、私に写真ってなんだったっけ、というのを思い出させてくれた。これもかなりに下手なのだが、それが逆に、いわゆる的な写真の見方をさせないため、「あ、そうだ、これが写真だったんだよな」と思わせる。そうだ、俺は画像を記録したいんではなくて、写真を撮りたかったんだ、忘れてた、という。

だから買ってよかったと思っている。


2003/11/29
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