塊魂

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塊魂


駅前を通る時に、放置自転車がすっきり消えてくれたらな、とか、渋滞の高速道路で、目の前の車の列がパッと消えてくれたらな、とか思うことがある。またはゴジラのように街を蹂躙してみたい、なんて反社会的なことを考えたりしたこともある。

それから子供の頃、泥団子を大きくするのに夢中になったり、ブロックを組み上げて大きくしてゆくのに、たくさんの時間を費やした。

これは、そんな原始的な面白さを体験できるゲームだ。

昔の私は、多少面倒なゲームも、時間をかけて操作方法や、設定を理解していただが、最近はとみに忙しくなって、遊べるようになるまでに時間がかかるゲームは手をつけることができなくなった。そういう時に助かるのが、単純な操作方法で、だけど色々なことが楽しめるゲームである。

塊魂の操作方法は、パッドについた二つのジョイスティックを親指でぐりぐりするだけだ。複雑なメニュー画面や、細かなパラメータ調整などは一切ない。単純だけれど、頭と指先をフル回転して楽しむ奥の深いゲームになっている。簡単に始める事ができ、あっというまに夢中になる。

このゲームは玉、というか塊を転がすだけのゲームで、両方のスティックを前に倒すと、塊が前にごろごろころがって行く。車の両輪を、それぞれ両親指で操作しているような感覚で、曲げたり、急ブレーキをかけたり、方向転換をするのも簡単だ。

この塊を転がしているのが身長5cmほどの「王子」というキャラクターである。ホームページに絵が載っている、緑色の宇宙人が王子。彼が塊を一生懸命転がします。彼の父である身長数キロメートルの王様が酔っぱらって星を蹴散らして、星空をなくしてしまったのが原因で、星空を修復するために塊を作っている。この王様や王子のキャラクターデザインが変でおもしろい。また性格がひねってあって、なかなかいい味になっている。セリフがいちいち気が利いている。

  • 塊には物がくっつく。
  • 物がくっつくと塊は大きくなる。
  • どんどん大きくなる。
  • そして塊の大きさによって、くっつけることができる物の大きさが変わる。

感覚的には塊の大きさの半分以下の大きさだとくっつくような感じだが、必ずしもそうではなくて、大きいけどくっつきやすい物と、小さくてもくっつきにくい物がある。たぶん体積?が関係しているのかな。

最初は角砂糖とか画鋲しか、くっつけることができない。しかし大きくすると消しゴムとか、ブロックとか、ねずみとか、玩具とか、どんどん大きな物がくっつけられるようになる。

なので、ちょっと考えればわかるけれど、うまくくっつけて行くと、ねずみ算的に、ものすごい勢いで大きくなる。実際に家の中に散らばった無数の物や、道ばたに転がったたくさんの物を巻き込みながら、どんどん大きくなってゆき、最後には、、、

音楽がイケてる。テーマ曲はクリスタルキングの田中氏がうたう、ナナー、ナ、ナ、ナ、ナナナー♪というもので、このテーマの色々な変奏がでてくる。他にも亜土さんとか、浅香唯とか、チャーリー・コーセイとか、松崎しげる、とか、どういうセレクションじゃ、という濃いラインナップの曲が、ゲーム中に流れている。その音楽に乗って、がんがん塊を転がしてゆき、インフレさせてゆくのが実に快適だ。

これほど良くできたゲームをやったのは久しぶりだと思った。操作方法、ゲームバランス、アイデア、作り込み、デザイン、設定、小道具など、どれもが高いレベルで完成している。個人的にはWIPEOUT以来の衝撃だった。

RPGやレースゲーム、格闘ゲームなど、ハリウッドばりに一種の定向進化(オーソゲネシス)をはじめてしまった多くの大物作品には、個人的にかなり飽いてしまっている。3DCGを美しくすれば、物の動きを実物に近づければ、アクションを派手にすれば、ストーリーを重厚長大にすれば、綺麗なキャラクターを登場させれば面白くなる、なんていうものではゲームはないと思っていた。しかし最近は、そうでない面白いゲームがさっぱりなくなってしまって、あぁもう面白いゲームには出会えないのかな、と思っていた所なので、とても嬉しい。まだゲームには可能性があるようだ。