アドルフに告ぐ

手塚治虫
アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)


第二次世界大戦のドイツと日本の話だ。あるBLOGに必読と書かれていたのを真に受けて、読んでみたのだが、たしかに、おもしろい。夕方に読み始め、読みふけって、結局夜中に全巻読み終わった。

悲惨なシーンが多い。でも主人公(彼は狂言回しと自分のことを言っているが)である峠草兵が、明るく元気なスポーツマンだというのが作品をじめじめしたものにするのを防いでいる。彼はドイツのゲシュタポや、日本の特高に散々な拷問を受けるし、近しい人が悲惨な末路を迎えるので、普通なら居たたまれないような苦しい話になると思う。彼はそういう状況にあっても、常にポジティブであっけらかんとしている。この峠のキャラクターに、読者である私はずいぶん救われた気持ちがした。

それで思い出したのが『頭がよくなる読み薬』という本だ。
よみがえる子どもたち ハンドブック版 その2 頭がよくなる読み薬 (よみがえる子どもたちハンドブック版 (その2))

この本に、子供たちに身につけて欲しい一番大事なこと、として次の4つが挙げられている。

  • 明るく
  • 元気で
  • 思いやりがあり
  • がまん強いこと

私はこの四項目にいたく同感して、それ以降何か、いらいらしたり、苦しいことがあると、思い出すようにしている。また、この4つの特質を持つ人が身近にいると、大変元気づけられる。『アドルフに告ぐ』の峠草平は、平時である現代の私には信じられないような、悲惨な体験をしているのに、明るく、元気で、思いやりがあり、がまん強い。

本書はヒトラーを含む3人のアドルフの話であり、もちろんこの3人のからみが抜群に面白く、この本の白眉だと思うのだが、今回は峠を取り上げて感想を書いてみた。

ストーリー、キャラクターの魅力、扱っているテーマ、さまざまな魅力を持つ見事な漫画だ。