マルコビッチの穴

スパイク・ジョーンズ
マルコヴィッチの穴 DTSコレクターズエディション [DVD]


かなりトリッキーな一作である。ちなみにエッチ満載なので大人向け。アイデアが秀逸で、ぐいぐいぴっぱられる。

売れない人形使いの男が、職に困って変なある会社に就職する。ビルの7階と8階の間に作られ、いつも腰を曲げてあるかないといけない変な事務所が職場である。そこで働くうちに、男はロッカーの裏に隠された秘密の扉を見つける。その穴は、実在の役者ジョン・マルコビッチに通じている。ジョン・マルコビッチに一体化できるのだ。ただし15分間だけ。

この荒唐無稽な設定を良くまぁ破錠させずに、ここまで面白い話にしたものだ。この穴を巡って主に4人、人形使いの男、その妻、同じ階で働く女、そしてジョン・マルコビッチ本人が、それこそ組んず解れつのどたばたを繰り広げる。頭がぐるぐるまわりだす。

その話の面白さもさることながら、私には映画自体から遊離しかねないほど魅力的な要素がいくつかあったのが収穫だった。

一つは人形使いが劇中で操演する人形劇で、この人形の動きがすごい。バルトーク青髭候の城をBGMに演じられる動きは、ぞくっとさせる魅力を持った物で、たしかにこれならと思わせる力を感じた。チェコ・アニメを思い出す。

次がジョン・マルコビッチという男の魅力だ。滑らかな小声で喋るはげ頭の男マルコビッチの存在感は圧倒的で、見ているこっちも、確かにこの男に同化できたら、と納得してしまう。

最後が、エンディングの子供の水泳の映像である。赤い水着を着た女の子が水中を自由に泳いでいるスローモーション映像だが、子供の生命力がストレートに伝わってくる幸せに満ちた映像で、これほど美しいシーンはそうないと思う。