魔法使いハウルと火の悪魔

魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ


じきに公開されるジブリ映画『ハウルの動く城』の原作です(この記事を書いたのは2004年夏)。読まれた方多いでしょうね。実は私はずいぶん前に最初の10Pぐらい読んで挫折していました。あの時は図書館の本だったので、今回は逃げ場がないように、購入して読みました。

なぜ挫折したかというと、文章とストーリー展開が飛び跳ねていて辛かったからです。!マークや?マーク、鍵括弧がばんばん使われていて、おしゃべり口調の地の文と、落ち着きの無い会話が連続します。次から次へ新しい要素が出てきて、話があっちへ転んだりこっちへ転んだり、気まぐれな動きについて行くのに苦労しました。

ある街の帽子屋に、三人姉妹が住んでいました。ある時、父がぽっくりいって、三人がばらばらになります。長女は父の後妻さんと一緒に帽子屋をやってゆきますが、突然店にやってきた荒地の魔女に、ある理由から老婆にされてしまい、絶望のあまり店を飛び出します。その街のまわりには、魔法使いハウルの動く城がうろうろしており、飛び出した彼女は城と出会ってしまいます。

スクランブルマインド』や『ハリーポッター』と似て、『ファンタジービジネスの仕掛け方』に書かれていた、ネオ・ファンタジーの特徴はすべて備えています。


(1) 登場人物がステレオタイプ
(2) ステレオタイプな約束事に従って物語を進める
(3) 物語の背景はヴァーチャルを前提としたアイディアの面白さが売り
(4) 物語の背景は矛盾があってリアリティに欠けていても問題ない
(5) 速いテンポでプロット(場面や話題)が変わっていく
(6) アイテムが豊富に登場する
(7) 様々な場面で迷いなく遠慮なく魔法を登場させる


まぁ(1)(2)は多少外してもいいかな。登場人物の魅力と、過去のファンタジーや童話の約束事をリサイクルして使っているのが、特徴の話ですから。

散々文句を言ってきましたが、これがけっこう面白い話なんですよ。アイデア満載で、めまぐるしく展開して、出てくる要素がなかなか楽しいんですね。それとハウル、ソフィー、カルシファーら登場人物が、それぞれ一癖あって魅力的です。

盛り上がりとか、大きなうねりとか、そういうのは全然ありません。これが漫画だったら、もっと素直に楽しめたかなぁ、と思いました。漫画でならとっちらかったストーリー展開や台詞まわしもそれほど気になりませんから。でも文章にされると大変辛いです。単に私が歳を取っただけなのかもしれませんが。

逆にアニメの原作として見ると、なかなか良い素材を選んだな、と思います。豊富で魅力的な素材が満載です。たぶんまるで違う料理ができるでしょう。というか違う料理にしなければ見るに耐えないと思います。少なくとも城の造形を見る限り、大丈夫そうですが。