雨やどりはすべり台の下で

雨やどりはすべり台の下で (偕成社文庫)
岡田淳


娘が読んだという岡田淳の作を、私も読んだ。娘がかなり夢中になって読んでいたらしいので、どんなものだろうという興味もあった。典型的なエブリディマジック型ファンタジーだ。メリーポピンズなどと同じタイプに属する。

団地にすむ子供達と、雨森という中年男性の話だ。公園で遊んでいる時に、突然降り出した雨を避けるために、子供達がすべり台の下にあつまる。雨上がりを待つ間に、雨森にまつわる不思議な経験談を、子供達がぽつりぽつりと話しだす。雨森というのは幻影を見せる能力を持つ魔法使いのような人物である。種明かしはないので、本当に魔法使いなのかは何も明らかにならない。

雨あがりを待つ、という設定と、個々の短編の雰囲気が、うまくあっていて、読みながら心が静かになる話だ。読んでよかったと思う。隣の部屋が海へ続く話と、それと対をなす海辺でボートに乗る女の子の話が好きだ。

物語は、終盤に雨森氏自身の過去と現在の話にからんでゆき、あるハッピーエンドに終局する。物語の構造としてはこれしかないと思う。ただ私は、あの解決はどうだろうと思った。腑に落ちない感じがした。これは岡田淳の作品はどれにも通じるのだが、終わらせ方がうまくない。少なくとも私はそう思う。何故かは未だに良くわからない。エブリディマジックを扱う同じ日本人の男性ファンタジー作家として、佐藤さとるは終わらせ方が抜群にうまい。それと対照的だと思う。