蟲師 4, 5巻

漆原 友紀
蟲師 (4)  (アフタヌーンKC) 蟲師 (5)  (アフタヌーンKC)


蟲師』の4巻。3巻から10ヶ月あまりで出た。多少製作ペースがはやくなった。調子出て来たかな。

幕末か明治の頃の雰囲気の日本を舞台にした妖怪ファンタジーだ。「蟲」と呼ばれる妖怪?が物の怪としていっぱいいる世界で、蟲が見え、蟲に関する知識があり、問題が起こった場合の対処方法を知っているプロが、蟲師である。主人公のギンコは、比較的ハイレベルの蟲師で、かつ蟲を呼び寄せる性質を持つため定住できず、旅から旅の生活をしている。

多少一本が長くなったかな。最初の「虚繭取り」は双子のキャラクターといいアイデアといい、なかなか良い。今回好きだったのは「籠のなか」。竹林に閉じ込められてしまった男の話だ。ギンコが竹林の中を歩いていると、男が座り込んでいる。聞くと迷って出られないという。二人で歩いてゆくが同じ所をぐるぐるまわって出られない。男はすでに三年も閉じ込められており、妻子とともに竹林の中に暮らしている。

この4巻あたりから出て来た特徴に蟲と人間のかかわり合いというのがある。以前は蟲とは異質な存在で、人間と共生関係にあったとしても別物だったのだが、この巻の話では、蟲と人間とは単純に切り離せない存在になってきている。蟲に取り付かれた人間は元の人間ではないのか?蟲に愛情を注いではいけないのか?

4巻まで読んできてアイデアの豊富さが大した物だと思う。もうずいぶんたくさんの妖怪のアイデアが出て来て、どれもなかなか面白い。ギンコを主人公にし、これまでの話を合わせて、できの良い脚本家にまかせて、映画でも作ったら面白かろうと思う。


5巻も、4巻までと変わらないレベル、変わらない作風で安定して楽しめる。いずれもハッピーエンドなのが読んでいてありがたいと思う。バッドエンドな話は疲れている時に読むとショックが大きい。

4巻までと多少違う点は、全体にゆったり目な点だ。コマの運びや、ストーリーの動かし方がそれまでよりも、ゆったりしている。最初の頃はアイデアが溢れて、それをまとめるためにキチキチに詰めたような感じがあったが、巻を追う毎に緩んできて、個人的には良いバランスになりつつあるのではないか、と思う。

なお主人公のギンコは、多少年をくった。30代前半ぐらいという感じだ。

蟲のアイデアそのものは、5巻では奇天烈なものはなく、それまでの同工異曲だ。この巻では、それよりも、人間側により重点が移っている。蟲と付き合う人間達の生き方の多様性が描かれている。また、その付き合い方の変遷も描かれる。

目に共生した蟲が視覚を与えてくれる場合、視覚認識のどこまでが自分のものなのか。記憶を吸収する蟲に寄生されている場合、人間の記憶の集積過程と、蟲の吸収過程はどう関係しているのか、など、なかなか興味深いお題が出てくる。

ただ『蟲師』全体に言えることだが、人間に対する洞察は残念ながら深くない。