クーの世界 1, 2

小田ひで次
クーの世界 1 (アフタヌーンKC) クーの世界 2 (アフタヌーンKC)


中学生の少女が、毎晩連続する夢を見るという話だ。その夢の中には、むかし死んだ、血のつながらない兄が出てきて、自分のことをクーと呼んでいる。連続する夢というのは、古くからある主題で、本質は胡蝶の夢だ。ジョナサン・キャロルの『月の骨』が似たような話らしいが未読である。

奇妙な動物が色々出てくる。絵柄は緻密な絵本風でユーモラスなのだが、ちょっとグロテスクだ。食べられたり、血みどろになったりする。夢を扱った作品として、高いレベルの完成度だと思う。読後、しばらく頭から印象が離れなかった。

1巻できれいに完結しているのだが2巻がある。読んでみた。なるほど。そうか。こう来たか。なかなか見事だ。相変わらず、怖いな。実に古典的な幻想物だ。タブーとの隣接領域で、不健康に話がぐらぐらする。

1巻との違いとして、主人公の祖母、ばぁちゃんの存在がある。そして、ばぁちゃんの曲がらない心持ちが作品に筋を通してくれたことで、読後感がずいぶん良いものになっている。

そして幻想から、ファンタジーになっている感じがする。ファンタジーと幻想の境界には、凛とした筋がある。筋が通る時に、幻想が席を譲り、ファンタジーに変質する。幻想とファンタジーのどちらが良いというのではないが、ここにファンタジーの持つ、現代社会での一つの役割があると思う。