佐賀のがばいばあちゃん

島田洋七
佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫)


もう、ずいぶん前に出版された本だ(2001年)。本屋で映画化記念のため、豪華版が出ていたので読んでみた。いい本だと思う。島田洋七あなどりがたし。すっと文が頭に入って、笑えて、泣けて、あぁそうだなと膝を打つ、そういう本だった。

私は佐賀出身なので、当たり前だが、懐かしいと感じた。それと同時に、私が子供のころは、この話に書いてあるようなことは、まだ日常にあったな、とも思った。現代社会の視点からすると、異質という位置づけで書いてあるのだが、私の原風景は、この本の通りだ。「由緒正しい貧乏」か。なかなか良い言い方だ。

「貧すれば鈍す」という諺がある。貧乏をすると、だんだん考えが鈍って愚かな考えに至ってしまう、という意味だと思うが、これは一面正しいと思う。私が子供の頃、大人たちの考えとして感じていたのは、「貧すれば鈍す」は人間の陥りやすい欠点であり、だからこそ、「貧」した時に、しっかり品性を保つ努力が必要だ、というものだった。また「貧すれば鈍す」こともあり得るから、もし知り合いで、そういう事例にあたっても呻吟せずに、世の中そういうものだ、と他山の石として受け止めよ、というニュアンスもあった。

なお、同郷の妻が言っていたが、「がばい」は形容詞ではない。副詞なので、このタイトルは変だ。あえて違和感が印象的に残るように、タイトルを決めたのだろうか。Wikipediaにも「佐賀のがばいすごかばあちゃん」が正しい、と書かれていた。その通り。