小さな王子さま

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 山崎庸一郎訳
小さな王子さま


昨夕、借りて来て読み始めて、私にとっては意外な事に、どっぷりと読みふけってしまった。以前、『星の王子さま』読んだのはいつだったろうか。もしかすると10年以上前かもしれない。

もっとさらりと読めると思っていた。いやはや。この話はすごい。彼がこの話を書いた年齢に近づいているせいか、書かれていること一つ一つが、突き刺さってくる。思い当たることが次々と浮かんで、寒気がするほどだ。

以前の私には、わかっていなかったろうな、と思う。名作というのは、以前にも言ったが、その時々で最良のものを与えてくれるんだな。

短い話なので、もちろん内容は忘れていないのだが、「ことば」と、書かれていない空白が、そのシンプルな見た目とは裏腹に、豊かな思いを伝えてくる。

なぜ王子さまは、点燈人とは「ともだちになれたかもしれない」のか。

「砂漠が美しいのは」「それがどこかに井戸を隠しているから」なのかぁ。

逆に、子供が読んで面白い話なのだろうか、という疑問も感じた。もちろん、つまらなくはないだろうが。少なくとも私自身の子供時代に読んでもピンとこなかっただろう。子供も千差万別なので、他の子は違うかもしれないが。

他に通しで読んだのは内藤濯訳のみなので、比較して何か言うのは私には難しい。立ち読みした倉橋訳や、池澤訳と比べると、少し日本語として抵抗がある。ただ、原文の意図を可能な限り正確に伝えよう、という意志を感じる。

ちなみに「ぼくーわたし」型だ。王子さまは「ぼく」、語り手は「わたし」と書かれる。かなり詳細な注釈がついていて、いくつも発見があった。

原題通りに『小さな王子さま』というタイトルにした理由については、以下のように書かれている。

ある星に住む王子さまと受け取られがちな従来の邦訳題名は、作品の物語性のみを全面に押し出し、その内面性を見落とさせ惧れなしとしないと考えたからである。

ほんと、この話の核心は、内面性だな。小さな心の動きでありながら、極めて普遍的な、崇高とさえ言える。

良い時間を過ごすことができた。