人間は脳で食べている

伏木亨
人間は脳で食べている (ちくま新書)


毎日新聞の書評で取り上げられていておもしろそうだったので読んでみた。ちょっと文体が読みづらいが、内容は面白かった。

わたしたちが、ものを「おいしい」と思う時には、さまざまな要因が絡んでいて、その中で特に人間、それも現代人に特殊に大きく絡んでいる要因が、「情報」によるおいしさだ。

動物の多くは、食物を「完全に安全」と信じられるような状態では、食することはできない。もしかすると毒入りかも、体調を壊すような腐った物かも、という不安を抱えながら食べている。それに比して人間は、安全が当たり前な状況で食べていて、それを支えているのが情報である。だから食べ方がまるで違う。

人間の舌には、甘みやうまみを感じる細胞は一種類しかないが、苦みを感じる細胞は多数の種類があるのは何故か、とか、人間が、油脂や糖分を過剰摂取するのは、どういう脳の仕組みによるのか、など興味深い話が満載である。

読んだ後、食事に対する考え方が変わる。ただ、だからといって急に食生活を改変できるなら苦労はないが(^ ^;)。「人間は習慣の奴隷」だなぁ、と自分を見ながら思う。

文体は、時々、仮想の読者が「括弧書きで」突っ込みを入れて、それに答えながら話をすすめる、というもので、ちょっと鬱陶しい。でも、それを補ってあまりある興味深い内容だった。