地球の長い午後

ブライアン・W・オールディス
地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)


今とは全く姿が変わってしまった遠い未来の地球の話だ。地球の半分以上が熱帯になっていて、巨大な肉食植物が繁茂している。人間は、今よりもずっと小さな体で、樹上生活者として細々と生き延びているが、他の哺乳類のほとんどは死滅しており、植物が支配している。

人間の想像力の限界を試す、すさまじいSFだ。それに加えて話が面白い。なるほどSFベストを選ぶといつも上位に来る小説だけある。

私にとって古典SFベストというと

などが出てくるが、これは確かにそれらに匹敵する。

未来を描くSFでは、作者が自分の想像力を駆使して、世界を描いてゆくわけだが、想像力というのは、実はそれほど自由ではなくて、どうしても同工異曲になってしまう。

例えば、現代の映画やアニメでは、SFを扱うものはとても多い。が、それらを見て、新しい想像力に触れたと思えるものは、ほとんどない。昔にくらべて丁寧にお金をかけて作ってあるとは思うが、どの未来も似たり寄ったりで、言ってみれば、想像力の発露が臆病なのではないかと感じるほどだ。

この『地球の長い午後』は、ページをめくるたびに新しいイメージに触れることができる。昔の本なのに、どういうことだろうか。「ツナワタリ」と呼ぶ巨大植物の生態など、唖然としてしまう。一枚のイラストもなく、すべてを文字だけで説明してある。映像ではなく、言葉でこれほどのものが描けるんだ。また文字だから良いというのも感じる。

それと、ファンタジーではなくSFだというのも驚きだ。いちいち理屈がついていて、エンディングにいたる全体の構成や背景も、まごうかたなきSFである。まいったね。

ビバ、センスオブワンダー!