最後の一壜

スタンリイ・エリン
最後の一壜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


ゆっくりと読んでいたミステリ短編集『最後の一壜』を読み了えた。

ちょっと古いが、1963年から78年にかけて1年に1作づつ書かれた短編集である。どれも丁寧で、密度の濃い読書時間を約束してくれる。なお、ミステリとしての切れ味は鈍い。そういうタイプの作家ではないんだな。ディケンズとかオーヘンリーとか、を彷彿とさせる味のある作品群である。

なかでも、やはり表題作の「最後の一壜」がいい。出てくる小道具に関する必要十分な書き込み、登場人物の造形、構成の巧みさ、台詞の一つ一つ、そしてクライマックスの美しさ、見事だ。