イシ ---北米最後の野生インディアン---

シオドーラ・クローバー
イシ―北米最後の野生インディアン (岩波現代文庫―社会)


1916年に亡くなった一人のインディアンについての本だ。

前半『ヤヒ族イシ』と後半『ミスター・イシ』から構成されている。前半は1870年から1900年ごろまでの間のカリフォルニアインディアン滅亡の歴史が書かれており、後半は1911年イシが姿を表してから死ぬまで5年間の事が書かれている。

作者はシオドーラ・クローバー、ル=グインのお母さんだ。本の中には、イシの最大の友人であった文化人類学者アルフレッド・クローバー、ル=グインのお父さんの事も多く書かれている。イシからはチープと呼ばれていたらしい。

希望を与えてくれる本だ。イシという人が実際に生きていたと知る事で、人間って捨てたもんじゃないかもしれない、と信じることができる。頭でっかちでない、彼の感覚や知識の正統さ、その清潔感あふれる生き方が気持ちよい。イシの、とげとげしさのない暖かみのある、人との付き合い方にも、羨ましさを感じる。彼と出会い、彼とともに過ごせた事でアルフレッド・クローバーらは、どれほど充実した、新鮮な時間を得たろうかと思う。

これを読んだのは、ゲド戦記の6巻セットが出たのを買って読み始めた所で、1巻の途中まで読み返しているところだった。ゲド戦記は、このイシに大きな影響を受けて描かれていることが良くわかる。