ドミノ

恩田陸
ドミノ (角川文庫)


夏になると各出版社が夏休み向けに文庫フェアを開始する。すでに読んだ本、名作だが読んでない本、昨年話題になった本などいろいろ並んでいて、セレクションにこめられた各社の狙いが見えて面白い。

集英社は『こころ』『銀河鉄道の夜』『友情』の表紙を蒼井優にしたり、『人間失格』の表紙をDEATH NOTE小畑健に描かせたり、ご苦労様といった感じだ。
集英社文庫 夏の一冊>
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/book/index.html

角川も同様のフェアをやっていて、ラインナップを眺めているだけでも面白い
<発見 角川文庫>
http://www.kadokawa.co.jp/dis/index.php

その中の一冊、恩田陸の『ドミノ』を読んだ。

半日ほどで読み終えた、読みやすく、楽しくて、面白い。ただ普通の娯楽小説とちょっと違うのは、主要登場人物が27人もいるという点だろう。一冊で27人もいるというのは、破綻を予感させるが、恩田陸さすが。みなそれぞれに立場や心理を描きながら、まとまりのある作品として成立させている。イメージは、『有頂天ホテル』などの三谷幸喜作品に近い。

舞台は東京駅だ。東京駅の見取り図が掲載されている。知らなくても楽しめるだろうが、東京駅を良く知っていれば、より楽しめるだろう。あの連絡通路を○○で爆走しているのか?!、とか、そうか、たしかに、あのラウンジからだと見えるな、など、立体的にイメージできるからだ。

登場人物にステロタイプ臭が強い、という批判はあるだろうし、深い人物描写は期待しようもないが、まずは描き分けられている点、それと、単なるステロタイプではなく、それぞれに味付けが施されている点に、プロの仕事だと感じた。

数時間で読み終えられる。気分転換に、夏の旅の友に、効能があるだろう。