[Movie] フラガール

李相日
フラガールスタンダード・エディション [DVD]


これは良い映画だなぁ。私の中で印象の近い映画は『スウィングガールズ』『ウォーターボーイズ』『シャルウィダンス』『ピンポン』あたりかな。どれも好きな映画だ(みんなカタカナなのは偶然の一致か)。

常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)創設時の話だ。実際、常磐炭坑の後に、ハワイアンセンターという発想は、どこから出て来たんだろうねぇ。昭和40年、高度経済成長の加速がついて来た頃が時代背景だ。石炭は時代遅れ、オイルの時代が始まったころ。ぼた山、坑道、真っ黒にすす汚れる男ども、炭坑町、と華やか、優雅、常夏の島、ゆったりと楽しむハワイアンというギャップが既に異世界的と思う。

李監督は、このギャップを丁寧に描いている。まず炭坑労働や労働組合など、煤にまみれた世界、昭和40年の常磐炭坑が描かれる。対して、フラダンスの優雅で天国的な、この世の春といった映像も丁寧で見事だ。ダンスの練習には、ずいぶん時間をかけたのだろうなぁ。ほれぼれする。ジェイの音楽もいい。

さて、主役の蒼井優だ。彼女はすごい。『花とアリス』のダンスのシーンでも、かなりやられたが、これまた見事。李監督が、その彼女を見事に撮っている。

笑って、泣いて、うきうきして、うつつを忘れることができるエンターテインメント映画だ。ある意味、実話をもとにした絵空事なんだが。

個人的に好きなシーンは、ハワイアンセンターの世話役である岸部一徳が、フラダンスの先生である松雪泰子が町を去る時に、正座をして「いい女になったなぁ」とぽろっと口走るシーンだ。それまで真面目で、職員として精一杯、身を尽くして、くだけた口を聞かなかった岸部一徳が、教え子達のことを信頼しながら思いやる松雪泰子を見て、思わず口に出すところだ。

そう、男も女も理屈でなく、いい、と思える瞬間があって、もうそれは「いい男」「いい女」としか言いようがないんだな。