ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」

高山一彦
ジャンヌ・ダルク―歴史を生き続ける「聖女」 (岩波新書)


ジャンヌ・ダルク研究は、ずいぶん大きな広がりを持っているとわかった。フランスでは飛び抜けて人気のある歴史上の人物ということらしい。日本だと義経かなぁ。でも義経は救国したわけではないから、ジャンヌ・ダルクは、もっと大きな存在なんだろうな。

以前、リュックベッソン映画『ジャンヌ・ダルク』の評を書いた(>リンク)。

その時に、子供の頃、偉人伝とかで知ったジャンヌ・ダルクとは、ずいぶん違うと思ったものだが、背後に、この本で述べられているような、詳細な研究成果があったんだな。この新書を読んでから思ったが、映画は、資料に対して、かなり正確にジャンヌ・ダルクを表現していると思う。

この本では、前半が、「ジャンヌ・ダルク処刑裁判」と「ジャンヌ・ダルク復権裁判」の膨大な記録をもとに、かいつまんで彼女の生涯をたどっている。残りは、彼女の死後、膨大な数の人が、彼女は何者だったのかを様々な角度から、時に尾ひれをたっぷり着けながら、描いたり、語ったりした内容が紹介されている。

著者である高山氏は、本当にジャンヌが好きなんだということが、良くわかる。なんか、命かけてます、ってな感じが伝わってくる。グッジョブ。

R・ペルヌーさんという、フランスのジャンヌ研究の権威のおばあさんがいたらしいのだが、そのペルヌーさんとの出会いが、あとがきに書かれている。

1973年の夏、初めてパリの国立文書館を訪れた時、酷暑の中を古いスービーズ館の中庭に筆者を出迎えて女史が言われた「ジャンヌ・ダルクという人物について尋ねるために私を訪れる人は多いけれど、ジャンヌの裁判記録に関心があると言われたのは貴方が初めて。ジャンヌ研究者として私はいかなる協力も惜しまない」という言葉が忘れられません。

この本を読んで、ジャンヌ・ダルクってのは、どういう人だったのだろうか、を私も考えた。

私がイメージしたのは、天然の入った、かなり素朴で実直な、ただけっこう頭の切れの鋭い女の子、という感じだ。

奇跡は本物だったのか?という点については、もちろんわからないが、まぁ、少なくとも奇跡に近い偶然が多数重なった中に、彼女の天賦の才が花開いた。つまり、歴史が彼女を呼んだ、のだろうと思う。