蟲師  1, 2

漆原友紀


ヴィレッジ・バンガードで購入した漫画です。漫画を買うのはすっごく久しぶりだ。「蟲」(ナウシカ以来、普通の言葉になった^_^;)という名前の妖怪にまつわる中・短編集です。名前は「蟲」ですが、狐憑きや、神隠し、塗り壁、河童、むじななど古い妖怪話を、蟲という第三の生命体の仕業ということにして世界が構築されています。借り物の設定も多いのですが、丁寧に独自の世界にしているので、それほど気になりません。過去の作品で雰囲気が似ているというと、杉浦日向子『百物語』を思い出します。あれほど突き放していない、もっとお話めいたつくりですが。蟲師というのは、蟲(妖怪)に憑かれた人を治したりする医者のような職業で、ギンコという蟲師が主人公です。

最初の「緑の座」という短編のしょっぱなに登場するのが、描いた絵が生き物になってしまうという少年で、その飄々とした感じがなかなか良く、買ってみることにしたものです。味のある絵、好みです(ふくやまけいこに似ている)。背景世界があまりしっかり構築されておらず、作者の気の向くまま描かれており、一貫性がないのが残念ですが、作者が後記で書いているように、そこまでの力量を期待するのはないものねだりでしょう。少なくともそれぞの短編の中では、筋が通るようになっていて破錠はありません。

こういう漫画家がちゃんと生息できるのなら、日本の漫画界は捨てたものではないな、と思います。可能なら長篇にトライしてもらいたいものです。


2002/5/26
few01