Book

エラントリス 鎖された都の物語

ブランドン・サンダースン 中三の娘から面白いから読んでみて、と言われて、多少しぶしぶ手に取ったハヤカワFTだ。読んでみて娘を侮っていたことに気付いた。軽いライトノベル風の異世界ファンタジーだと思って(タイトルからして、そんな感じ)読み始めたの…

グラン・ヴァカンス ―廃園の天使(1)

飛浩隆 残酷であることが、良いことであるかのような著者の姿勢には、全く賛同できない。これを喜ぶ読者が多いだろうことも充分理解できるが、いただけない。それを除けば、大変良く出来たエンターテインメントだと思う。暴力・残酷・エッチな描写をふんだん…

おおきく振りかぶって

ひぐちアサ 『おおきく振りかぶって』の8巻までを一気に読んだ。西浦高校という公立校に発足したばかりの1年生だけの硬式野球部の話だ。主人公のピッチャーの性格が弱弱というのは珍しい。この漫画の特徴は、登場する野球少年たちがヒーローからほど遠いと…

天と地の守り人

上橋菜穂子 『天と地の守り人』を読み終わったのは、しばらく前なのだけど、ちょっと言葉に表しづらい「もやもや」があって感想を書けずにいた。面白かったけど、やはりひっかかる。手放しに喜べない。充分に楽しませてもらった。特に2巻は良かった。2巻のテ…

ルリユールおじさん

いせ ひでこ 娘が小さいころは絵本をたくさん買っていた。その娘も中三で、最近は絵本は買わない。その娘が、ついおとといぐらいに、昔の絵本を取り出して読んでいた。そして「とても怖かった本が、怖くなくなっていた。でももう読みたくない」とか、「やっ…

カラマーゾフの兄弟

ドストエフスキー

バッテリー VI巻(最終巻)

あさのあつこ 今日はあたたかで天気もよかったので、昼休み、近くの川縁まで散歩に行った。途中で本屋に寄ったら、『バッテリー』のVI巻(最終巻)が文庫で出ていたので、買い、先ほど読み終わった。終わったなぁ。このシリーズは面白かった。楽しませてくれ…

一角獣・多角獣

シオドア・スタージョン 復刊された異色作家短編集の一冊を手に取った。『人間以上』のスタージョンが短編の名手であることは有名だが、その中でも長らく復刊がまたれていたのが本作である。この本が日本に登場したのは私が生まれた年だから、なんとすでに40…

ローマ人の物語 賢帝の世紀 (上)(中)(下)

塩野七生 三人の皇帝の時代が描かれている。正面突破の武人、トライアヌスが一人目、緻密かつ才能にあふれる歩く人、ハドリアヌスが二人目、そして人望厚く、温厚なピウスが三人目だ。トライアヌスに関して書かれた上巻は、ほとんど資料が残っていないため、…

スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

香山リカ 毎日新聞に、ちょっと気になる書評があったので、本屋で買ってきた。3時間ほどで読んだ。軽い本だ。なぜ香山リカが書いているのかというと、診療に訪れる患者の中に、前世を教えろなど、占い師まがいのことを、彼女(医者)に期待するのが、時々目…

本を読むわたし

華恵 図書館に行く妻について行った。入り口付近で立って待っていると、「さいきん借りられた本」のコーナーにある、赤い表紙の本が目に留まった(装丁はクラフトエヴィング商會の吉田夫妻)。「本を読むわたし」という本だ。さいきん、自分の本選びを考え直…

黒猫/モルグ街の殺人

ポー (光文社古典新訳文庫シリーズ) ポーの『黒猫/モルグ街の殺人』を読んだ。光文社の、古典新訳文庫、という新シリーズだ。現代語訳なので、とにかく読みやすい、読むのが楽である。漢文調の古い訳も雰囲気があって良いのだが、現代語だとこれほど楽だと…

本朝奇談 天狗童子

佐藤さとる もし、この本が佐藤さとるファンの踏み絵ならば、私はファンなんだな。面白かった。読む前は、なにやら漢字の多い、古くさいタイトルで、取っ付きにくいと感じた。また、表紙の絵柄も村上豊の力強いざっくりとしたもので、悪くはないが、佐藤さと…

太陽の塔

森見登美彦 第15回ファンタジーノベル大賞受賞。 太陽の塔というのは、あの万博公園にある岡本太郎の太陽の塔のことだ。あの太陽の塔にはまってしまう水尾さん、という女子大生が話の重要なキーになっている。ちょうどクリスマスのころの京都を舞台にして…

あたらしい教科書「コンピュータ」

編集 山形浩生 両方とも食い足りない感じがした。どっちも面白かったけどね。特にコンピュータは、食い足りない。プロジェクト杉田玄白の山形浩生だから、もっと面白いかと期待したが、まぁ教科書だものね。サウンドエシックスの小沼純一は、なかなか良い仕…

あたらしい教科書「音楽」

編集 小沼純一

カレーの法則

水野仁輔 カレーが好きだ。家で作ることも多い。妻に作ってもらうことの方が多い。よく使うのは市販のカレールーだ。昔と違って、ほんと良くできている。完成されている、っと言っていいかもしれない。ある時、材料を切ったり、タマネギをいためたりして、ス…

夜のピクニック

恩田 陸 この本は妻と娘が先に読んでいて、二人とも面白いといっていた。映画が作られているが未見だ。読み始めて最初、今の私には苦しいかなと思った。高校三年生の話なのだが、さすがに遠い。それに恩田陸特有の作り物めいた感じがちょっと鼻についた。面…

イシ ---北米最後の野生インディアン---

シオドーラ・クローバー 1916年に亡くなった一人のインディアンについての本だ。前半『ヤヒ族イシ』と後半『ミスター・イシ』から構成されている。前半は1870年から1900年ごろまでの間のカリフォルニアインディアン滅亡の歴史が書かれており、後半は1911年イ…

魔法ファンタジーの世界

脇明子 導入と四つの章から構成されている。導入部には、今の児童文学ファンタジーを取り巻く状況を、たんに上っ面をなぞるのではなく、著者自身の立ち位置から嘘をつかないように問題に迫り、的確にまとめている。脇氏はノートルダム清心女子大の教授であり…

MIND HACKS -実験で知る脳と心のシステム-

Tom Stafford and Matt Webb だまし絵を見ると、世界が揺らぐ。 同じ長さの棒の長さが違って見える。 あるはずの無い図形が見える。 止まっている絵が動いて見える。 私たちは、自分の五感で感じている世界が、継ぎ目なく辻褄があっていると、信じている。自…

あたらしい教科書 3 ことば

加賀野井秀一、酒井邦嘉、竹内敏晴、橋爪大三郎 「あたらしい教科書」というシリーズが刊行されている。その第3巻が「ことば」だ。なかなかいい。大変丁寧な本作りがされている。プチグラパブリッシングという出版社は知らなかったが、チェブラーシカや北欧…

最後の一壜

スタンリイ・エリン ゆっくりと読んでいたミステリ短編集『最後の一壜』を読み了えた。ちょっと古いが、1963年から78年にかけて1年に1作づつ書かれた短編集である。どれも丁寧で、密度の濃い読書時間を約束してくれる。なお、ミステリとしての切れ味は鈍い…

空中庭園

角田光代 最近ときどきテレビで拝見する角田光代の代表作と言われている。以前から気になっていたので読んで見た。団地に住む家族の話だ。父、母、姉、弟、と、少し離れて暮らす祖母や、父の愛人などが出て来る。表面的には現代的に、コミュニケーションも上…

地球の長い午後

ブライアン・W・オールディス 今とは全く姿が変わってしまった遠い未来の地球の話だ。地球の半分以上が熱帯になっていて、巨大な肉食植物が繁茂している。人間は、今よりもずっと小さな体で、樹上生活者として細々と生き延びているが、他の哺乳類のほとんど…

人間は脳で食べている

伏木亨 毎日新聞の書評で取り上げられていておもしろそうだったので読んでみた。ちょっと文体が読みづらいが、内容は面白かった。わたしたちが、ものを「おいしい」と思う時には、さまざまな要因が絡んでいて、その中で特に人間、それも現代人に特殊に大きく…

東京 古本とコーヒー巡り(古書店)

なかなか洒落た本で、これをめくっていると本屋とカフェに行きたくなる。新刊書店の方で、最初に掲載されているのは東京堂書店である。あそこは凄い。ほんと何時間でもいられる。このML(飛行船通信)に関するところとしては、教文館ナルニア国、トムズボック…

東京ブックストア&ブックカフェ案内(新刊書店)

かもめ食堂

群ようこ 本屋で立ち読みして、選んだ。もうじき映画が公開されるらしい。見にいこーっと。映画の原作として書き下ろされた小説だそうだ。フィンランドに、一人の日本人女性が開いた小さな食堂「かもめ食堂」、にまつわる話だ。飄々とした楽しい話である。こ…

小さな王子さま

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 山崎庸一郎訳 昨夕、借りて来て読み始めて、私にとっては意外な事に、どっぷりと読みふけってしまった。以前、『星の王子さま』読んだのはいつだったろうか。もしかすると10年以上前かもしれない。もっとさらりと読…