ローマ人の物語 賢帝の世紀 (上)(中)(下)

塩野七生 三人の皇帝の時代が描かれている。正面突破の武人、トライアヌスが一人目、緻密かつ才能にあふれる歩く人、ハドリアヌスが二人目、そして人望厚く、温厚なピウスが三人目だ。トライアヌスに関して書かれた上巻は、ほとんど資料が残っていないため、…

スピリチュアルにハマる人、ハマらない人

香山リカ 毎日新聞に、ちょっと気になる書評があったので、本屋で買ってきた。3時間ほどで読んだ。軽い本だ。なぜ香山リカが書いているのかというと、診療に訪れる患者の中に、前世を教えろなど、占い師まがいのことを、彼女(医者)に期待するのが、時々目…

本を読むわたし

華恵 図書館に行く妻について行った。入り口付近で立って待っていると、「さいきん借りられた本」のコーナーにある、赤い表紙の本が目に留まった(装丁はクラフトエヴィング商會の吉田夫妻)。「本を読むわたし」という本だ。さいきん、自分の本選びを考え直…

黒猫/モルグ街の殺人

ポー (光文社古典新訳文庫シリーズ) ポーの『黒猫/モルグ街の殺人』を読んだ。光文社の、古典新訳文庫、という新シリーズだ。現代語訳なので、とにかく読みやすい、読むのが楽である。漢文調の古い訳も雰囲気があって良いのだが、現代語だとこれほど楽だと…

六所神社に初詣

初詣に行った。なんとなく毎年、散歩がてらに行く。今年は、豪徳寺の近くの六所神社に行った。単に近所で、あまり参拝客が多くないところ、という選び方をしているので、何も知らずに出かけた。そのため参道に並ぶ列の後尾について、さて、ここは何の神様が…

本朝奇談 天狗童子

佐藤さとる もし、この本が佐藤さとるファンの踏み絵ならば、私はファンなんだな。面白かった。読む前は、なにやら漢字の多い、古くさいタイトルで、取っ付きにくいと感じた。また、表紙の絵柄も村上豊の力強いざっくりとしたもので、悪くはないが、佐藤さと…

太陽の塔

森見登美彦 第15回ファンタジーノベル大賞受賞。 太陽の塔というのは、あの万博公園にある岡本太郎の太陽の塔のことだ。あの太陽の塔にはまってしまう水尾さん、という女子大生が話の重要なキーになっている。ちょうどクリスマスのころの京都を舞台にして…

木内美羽写真展「mius」

妻と新宿のコニカミノルタプラザ http://konicaminolta.jp/about/plaza/ に行って、写真展を見てきた。コニカミノルタプラザというのは、JR新宿駅の東口を出て中村屋の手前、新宿高野ビルの4Fにある写真展示スペースだ。ほとんどは無料で、セミプロやプロの…

あたらしい教科書「コンピュータ」

編集 山形浩生 両方とも食い足りない感じがした。どっちも面白かったけどね。特にコンピュータは、食い足りない。プロジェクト杉田玄白の山形浩生だから、もっと面白いかと期待したが、まぁ教科書だものね。サウンドエシックスの小沼純一は、なかなか良い仕…

あたらしい教科書「音楽」

編集 小沼純一

カレーの法則

水野仁輔 カレーが好きだ。家で作ることも多い。妻に作ってもらうことの方が多い。よく使うのは市販のカレールーだ。昔と違って、ほんと良くできている。完成されている、っと言っていいかもしれない。ある時、材料を切ったり、タマネギをいためたりして、ス…

夜のピクニック

恩田 陸 この本は妻と娘が先に読んでいて、二人とも面白いといっていた。映画が作られているが未見だ。読み始めて最初、今の私には苦しいかなと思った。高校三年生の話なのだが、さすがに遠い。それに恩田陸特有の作り物めいた感じがちょっと鼻についた。面…

イシ ---北米最後の野生インディアン---

シオドーラ・クローバー 1916年に亡くなった一人のインディアンについての本だ。前半『ヤヒ族イシ』と後半『ミスター・イシ』から構成されている。前半は1870年から1900年ごろまでの間のカリフォルニアインディアン滅亡の歴史が書かれており、後半は1911年イ…

魔法ファンタジーの世界

脇明子 導入と四つの章から構成されている。導入部には、今の児童文学ファンタジーを取り巻く状況を、たんに上っ面をなぞるのではなく、著者自身の立ち位置から嘘をつかないように問題に迫り、的確にまとめている。脇氏はノートルダム清心女子大の教授であり…

月刊言語2006年6月号 特集「ファンタジーの詩学 ---想像力の源

月刊言語2006年6月号 特集「ファンタジーの詩学 ---想像力の源泉をたずねて---」 http://thistle.est.co.jp/tsk/detail.asp?sku=50606 言語学関連の雑誌「言語」でファンタジーの特集が組まれていた。 特集記事は以下の通り: [1] 二重性の文学としての…

MIND HACKS -実験で知る脳と心のシステム-

Tom Stafford and Matt Webb だまし絵を見ると、世界が揺らぐ。 同じ長さの棒の長さが違って見える。 あるはずの無い図形が見える。 止まっている絵が動いて見える。 私たちは、自分の五感で感じている世界が、継ぎ目なく辻褄があっていると、信じている。自…

あたらしい教科書 3 ことば

加賀野井秀一、酒井邦嘉、竹内敏晴、橋爪大三郎 「あたらしい教科書」というシリーズが刊行されている。その第3巻が「ことば」だ。なかなかいい。大変丁寧な本作りがされている。プチグラパブリッシングという出版社は知らなかったが、チェブラーシカや北欧…

ソング・ブック

谷川俊太郎+谷川賢作 「ゆっくりゆきちゃん」を知っているだろうか。あんまりゆっくりなので、ゆっくり朝の準備をして、たどりついた学校はもう終わっていて、家に戻ったら、娘が三人生まれていた、という、ナンセンスが混じった、谷川俊太郎の詩だ。究極の…

かもめ食堂

荻上直子 今日(2006/5/1)は平日ながら職場が休み、妻は仕事、娘は学校なので、家に一人だ。掃除をして、さて、どう時間を過ごそうかと考えて、映画を見に行くことにした。近所のシネコンの上映リストを眺めてみたがめぼしい物がないので、ちょっと遠いけど、…

最後の一壜

スタンリイ・エリン ゆっくりと読んでいたミステリ短編集『最後の一壜』を読み了えた。ちょっと古いが、1963年から78年にかけて1年に1作づつ書かれた短編集である。どれも丁寧で、密度の濃い読書時間を約束してくれる。なお、ミステリとしての切れ味は鈍い…

夜消える

夜消える 藤沢周平 藤沢周平の短編集を久しぶりに読んだ。いい年をした(中年以上)男女の機微を描く小説ばかりである。どもれ大人の人間関係で、子供の頃は、まったくピンとこなかっただろうが、この年になって読むと、どれも実感がある。「踊る手」「遠ざ…

空中庭園

角田光代 最近ときどきテレビで拝見する角田光代の代表作と言われている。以前から気になっていたので読んで見た。団地に住む家族の話だ。父、母、姉、弟、と、少し離れて暮らす祖母や、父の愛人などが出て来る。表面的には現代的に、コミュニケーションも上…

地球の長い午後

ブライアン・W・オールディス 今とは全く姿が変わってしまった遠い未来の地球の話だ。地球の半分以上が熱帯になっていて、巨大な肉食植物が繁茂している。人間は、今よりもずっと小さな体で、樹上生活者として細々と生き延びているが、他の哺乳類のほとんど…

人間は脳で食べている

伏木亨 毎日新聞の書評で取り上げられていておもしろそうだったので読んでみた。ちょっと文体が読みづらいが、内容は面白かった。わたしたちが、ものを「おいしい」と思う時には、さまざまな要因が絡んでいて、その中で特に人間、それも現代人に特殊に大きく…

神はサイコロを振らない

今クールのTVドラマで毎回楽しみにしていた『神はサイコロを振らない』が最終回を迎える(2006/3/12の文章)。最初はSF風味なコメディドラマだと思っていたが、立派にSFだ。というか最近久しぶりにまっとうなSFだと思う。マイクロブラックホールが、どうこうい…

歴史時代書房 時代屋

http://jidai-ya.com/index.html 神保町、というより小川町にある不思議な本屋、兼グッズショップだ。本屋街からスポーツ用品店の並ぶ通りを過ぎて、オフィス街に入ったあたりにある。一見、変なグッズショップで、入ると、ちょっとケバい本屋である。中は縁…

東京 古本とコーヒー巡り(古書店)

なかなか洒落た本で、これをめくっていると本屋とカフェに行きたくなる。新刊書店の方で、最初に掲載されているのは東京堂書店である。あそこは凄い。ほんと何時間でもいられる。このML(飛行船通信)に関するところとしては、教文館ナルニア国、トムズボック…

東京ブックストア&ブックカフェ案内(新刊書店)

かもめ食堂

群ようこ 本屋で立ち読みして、選んだ。もうじき映画が公開されるらしい。見にいこーっと。映画の原作として書き下ろされた小説だそうだ。フィンランドに、一人の日本人女性が開いた小さな食堂「かもめ食堂」、にまつわる話だ。飄々とした楽しい話である。こ…

博士の愛した数式

小泉堯史 良い映画だ。ただ原作を読んでいない方がより素直に楽しめるだろう、と思った。原作をなぞったシーンは、原作を思い出しながら見てしまう。原作は、小川洋子の作品の中では特異的に、いわゆる「良い話」になっているとのことだが、それでも私には、…